人間の男の子を助けたゴリラ

生命は弱肉強食の冷酷な地獄を生き抜き、
進化の果てに「共感」という能力を手に入れました。
「共感」を持つ生命は、ほ乳類と鳥類。
 
例えば、マウスの「共感」の話。
レバーを押すとエサが出る装置を学習したマウスがいました。
ある日そのマウスは、そのレバーを押すとエサが出るだけではなく、
仲間のマウスに電流が流れて仲間の苦しむ姿を目撃します。
すると以降は、エサの出るレバーを押すことを、そのマウスは止めるのです。
 
これら動物の「共感」についての情報は、
書籍「共感の時代へ(フランス・ドゥ・ヴァール著)」で学んだものです。
「人生とは何なのか?」「優しさとは何なのか?」と
疑問や悩みを抱いている人には、この書籍をお勧めします。
 
さてこの書籍によると、「共感」には3つのレベルがあるそうです。
すなわち「情動伝染」「他者への気遣い」「対象に合わせた援助」の3レベルです。
最も高度な「対象に合わせた援助」ができる動物には、
人間および類人猿、ゾウ、クジラ目の動物が該当します。
そして興味深いことに、
これらの動物のみが共有する
「フォン・エコノモ・ニューロン(VEN細胞)」という脳細胞が存在するのだそうです。
脳のこの部位が損傷を受けると、人間では「共感」や「他者視点取得の喪失」が起こります。
 
つまり言いたいことは、これらの類人猿、ゾウ、クジラ目の動物は、
人間とより情緒的にわかりあえる素地を持っているということです。
 
さて今日は、上記動物と人間の「心」が通じ合った一つの事例を紹介しようと思います。
 
「人間の男の子を助けたゴリラのビンティ」
 それは、1996年に起きた出来事です。
 シカゴのブルックフィールド動物園を訪れた3歳の男の子。
 その男の子はゴリラ舎の柵で遊んでいて、
 何と5.5メートル下のコンクリートに落ちて意識を失ってしまったのです。
 母親は悲鳴を上げて、助けを求めました。
 意識を失った子どもが大型動物の群れの中に落ちてしまうことが
 どのようなことを意味するのか、皆さんにも想像がつくのではないでしょうか。
 しかし、動物園の係員が上から放水して近づこうとするゴリラを制する中、
 ある1匹の母ゴリラがその男の子を抱き上げました。
 そのゴリラの名はビンティ。
 彼女は男の子を抱き上げて、
 飼育員の出入りする扉の所まで抱えて運び、
 飼育員にその子を届けたのだそうです。
 途中大きな雄ゴリラが近づいた時には、唸って追い払いました。
 その男の子を気遣い助けようとしたビンティの「心」は、
 当時の多くの人々の「心」に共鳴したようです。
 ビンティが男の子を助けた時の映像が児童保護の広告にも使われました。

 
なおこの心優しきビンティは、
以前ブログで紹介した手話を話すゴリラのココの姪なのだそうですよ。
 
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