生命にとっては人間も「環境」の一つ

人間と自然は、相容れないもの。
対立するもの。
 
「自然破壊」「環境破壊」という言葉でもわかるとおり、
そういう構図で語られることが多いです。
 
しかし、自然を形成する生命たちには、
そんな区分はありません。
 
人間の整備したエリアをチャンスとして、
自分たちの生き残る環境としているのです。
 
例えば、雑草。
彼らの勝負は短期決戦。
一定年数が経過すると、樹木に日照を奪われ敗北する定めにあります。
ですので、人間が環境を変えるまでは、
彼らは森林火災の後とか、森林と河川や海の地域の境目とか、
そういうニッチな環境でしか生存することができなかったのです。
 
しかし人間が現れ、どんどん宅地造成等が進みます。
人間の活動はものすごくスピードが速い。
樹木の長いライフサイクルでは追いつけず、
雑草のような1年草や多年草が、人間エリアを制圧している状況です。
 
他には、鳥たちも人間という環境を利用しています。
例えば、ツバメ。
彼らは、今の時期、東南アジアから台湾経由で日本にやってきます。
日本に何をしにやってくるかというと、巣作り・産卵・育雛のためにやってくるのです。
 
ツバメの巣は、森林に巣を作りません。
民家や商店の軒先のような人工的な構築物に巣を作るのです。
 
なぜなのか?
それは、人間のいる環境の方が、天敵がいないからです。
都市部に猛禽類はほとんどいません。キツネやタヌキも同様です。
 
だから、ツバメは人間を自分たちに安全な環境として利用している訳です。
 
都市部でよく見かける動物たちは、例外なく人間を環境としています。
ハトなんて警戒心の欠片もない野生動物らしくない姿を街中で見かけますが、
彼らにとっては人間がたくさんいる街中こそ最も安心してくつろげる場所なのでしょう。
 
もう一つはエサの問題もあります。
街中でよく見かけるスズメたち。
彼らは、人間に対して警戒心を解きませんが、
しかし、廃村になった村からはスズメたちが姿を消すことが報告されています。
スズメにとっては、
人間の農耕活動や生活活動によって得られるエサの存在が大きいのです。
 
そんな一部の生物たちにとっては安寧の場である人間環境ですが、
とうとう黒船がやってきたというニュースがありました。
 
ニューヨークの摩天楼に、ハヤブサが出るのだそうです。
彼らは、警戒心の欠片もないハトたちを獲物としています。
 
人間環境をフロンティアとして、
様々な動物たちがやってきているのが現状であり、
したたかな野生動物たちにとっては、ピンチでなくチャンスであったりする訳です。

日本の関東の都市部には、最近ハクセキレイが進出してきています。
昔は、東北の海岸部でしか見ることのできなかった鳥たちです。
環境の変化に、ガンガン順応していく野生動物のたくましさに、
私は畏敬の念を抱きます。