「あした天気にしておくれ」

(注意)この作品のみ、暗く後味の悪いテーマを題材としています。
    もし、そのような小説が苦手な方は他の作品を読まれることをお勧めします。

 
「あした天気にしておくれ」
 
俺にはキヨシという幼馴染がいた。
キヨシの家は貧乏で狭かったから、
アイツはよく外で遊んでいた。
俺は家でゲームするのが好きだったけど、
キヨシが誘いに来た時はいつも外で遊んだ。
アイツは外で遊ぶことの天才なんだ。
一緒に魚釣りやザリガニ捕りに行ったり
木登りしたり秘密基地作ったり。
キヨシと遊ぶ時は、いつも素敵な青空だった。
今でもあの楽しい日々を夢に見るよ。
 
 てるてる坊主  てる坊主
 あした 天気にしておくれ
 いつかの夢の 空のように
 はれたら 金の鈴あげよ
 
 
キヨシは雨の日が大嫌いだった。
何故かと聞くと、家にいるのが嫌だからと言ってた。
そして、俺と外で遊ぶのが楽しいと言っていた。
梅雨のシーズンには、
俺とキヨシはたくさんのてるてる坊主を作ったのを覚えている。
キヨシと外で遊ぶ時、
キヨシは「遊んでくれてありがとう」って
いつもジュースやお菓子を持ってきてくれた。
キヨシの家は駄菓子屋だから、
きっと親が持たせてくれたんだと思っていた。
 
 てるてる坊主  てる坊主
 あした 天気にしておくれ
 わたしのねがいを 聞いたなら
 あまいお酒も たんと飲ましょ
 
 
ある雨の日、キヨシが傘もささずに俺の家の玄関先に来た。
誰に殴られたのか全身にひどい痣ができていた。
そして「外で一緒に遊ぼうよ」って俺に声をかけてきたんだ。
外はザーザー降りの土砂降りだし、
何より、キヨシの全身の痣を見て怖くなった俺は、
「嫌だよ!こんな雨の日なのに!!」と、キヨシの誘いを断った。
そうしたら、急にキヨシの目つきが変わった。
そして、「いつも遊んでくれるのに、何で今日だけダメなんだよ!」って
突然俺の首を絞めてきたんだ。ものすごい力で。
俺は必死にキヨシの手を振り払い、玄関の中に逃げ込み鍵をかけた。
キヨシはドアをどんどん叩いて、「ゴメン、開けてよ!」って叫んでいた。
俺はその時、ドアを開けるべきだったんだ・・・
キヨシはしばらくして俺の家を去り、
いつもの遊び場の木で首を吊って死んだ。
  
 てるてる坊主 てる坊主
 あした 天気にしておくれ
 それでも曇って 泣いてたら
 そなたの首を チョンと切るぞ