ルーム・トゥ・リード

未曾有の震災からまだ1週間ほどしか経っていませんが、
通常運転に切り替えたいと思います。
 
今できることは、自分にできることを一生懸命やることです。
 
「ルーム・トゥ・リード」というNGOをご存知でしょうか?
2000年に設立されて以来、
南アジアやアフリカの識字率の低い国々に対して、
2011年1月までに
・1,442校の学校建設
・10,759の図書館・図書室を設立
・521タイトルの現地語児童書籍を刊行
・940万冊の書籍を寄贈
・10,400名の女子に奨学金を給付
といった実績を上げている組織です。
詳しくは、こちらのホームページをご覧下さい。
 
教育や読書は、貧困から脱却するチャンスを途上国の人々に与えます。
しかし多くの途上国では、家庭の貧困や未整備なインフラ環境のせいで、
子ども達が教育を受けるチャンスを与えられていないのです。
そういった地域の親や子ども達は、「教育の価値」を心からよく理解しています。
日本の多くの子ども達のように、義務だから勉強するのではなく、
「子どものために」「自分のために」教育を与えて欲しいと強く願っているのです。
「ルーム・トゥ・リード」では、そんな彼らに教育というチャンスを与えています。
教育というチャンスは、全ての子どもに平等にもたらされなければならないものです。
実際に、そういう国々で教育というチャンスを与えられた子ども達は、
本当に心から喜び勇んで勉強をします。
 
「ルーム・トゥ・リード」の活動の仕組みはシンプル。
経済的に豊かな国々から資金を集め、
識字率の低い国々で図書館や学校を造る。
ただし、そのやり方はとても洗練されています。
 
一般の人々から寄付を募ってその資金を途上国に届ける試みは、
例えばユニセフ赤い羽根共同募金などでも行われています。
募金は、最も一般的な社会貢献活動と言えるでしょう。
 
しかし募金は、募金したそのお金が
どのように使われたか全くわからないという問題があります。
もしかしたらスタッフの運営資金に使われたのかもしれない。
現地に渡ったとしても、現地の役人に横領まがいで使われてしまうかもしれない。
 
その点、「ルーム・トゥ・リード」は至ってシンプルです。
寄付のメニューがあります。
 長期女子奨学金 約25万円(2,500米ドル)
 女子奨学金  約25,000円(250米ドル)
 図書室設置  約40万円 (4,000米ドル)
 小中学校:教室数4  約330万円(33,000米ドル)等々
 ※現在は、「BOOK OFF」と提携した価格のないメニューもあるようです。
上記のメニューのうちどれかを指定して寄付すれば、
確実にその支援が行われるのです。
例えば、女子奨学金を指定して250米ドルを寄付すれば、
確実に貧困家庭の女子1人が1年間学校で学ぶことができます。
 
この組織を立ち上げたのは、ジョン・ウッドという方です。
彼は、もともとマイクロソフトで国際部門の要職に就いていた
やり手のスーパービジネスマンでした。
彼は、マイクロソフトの「結果最重視」の文化を採り入れ、
やろうとすることではなくやってきた成果の説明責任を果たすことで、
寄付者に対して他の慈善プロジェクトとの差別化を図ったのです。
 
また、現地の図書館や学校の建設の労力は
現地の方々のボランティアによって提供されるという特徴があります。
例えばネパールのある村では児童の親たちが、
砕石を行っている工場主に嘆願してセメントを寄付してもらい、
標高差1000メートルの丘の上まで急な坂道を1時間かけて登り運び上げるのです。
こうして、海外の資金と住民の汗で造られた学校や図書館は、
住民達の大切な資産として末永く大切にされます。
 
ところで、「ルーム・トゥ・リード」では、
男子よりも女子の識字率の改善に力を入れています。
男子よりも女子の方が識字率が圧倒的に低いという現状もさることながら、
女子は親となった際に子どもに読み書きを教えることができる立場にあるからです。
 
他にも「ルーム・トゥ・リード」の魅力や仕組みの素晴らしさは、
語ればきりがないのですが、詳しくは、
ジョン・ウッド著「マイクロソフトでは出会えなかった天職」(ランダムハウス講談社
という本で読むことができます。
そこには、マイクロソフトのエグゼクティブという地位を捨てて、
世界の子ども達のために奮闘することを決めた彼の足跡が書かれています。
「生きること」とは何か。
多くのヒントをくれる本だと思います。
私のお奨めです。
 
 
相田みつをさんの言葉に
「うばい合えば足らぬ 分け合えばあまる」
という言葉があります。
 
また上記紹介書籍に、ダライ・ラマさんのこんな言葉が出てきます。
「何かを与えれば、代わりに得るものがある──幸せだ。」
 
お金も才能も愛も与えられたもの。
自分のために使うばかりではなく、
不足して苦しんでいる人々に分け与えることができれば、
きっとこの世の中は幸せに満ちると思います。
それに、提供した本人も幸せになれるはずです。
 
ジョン・ウッドさんは、
マイクロソフト社員の地位を捨て当時の素敵な恋人とも別れ、
上記で紹介した書籍を執筆している時点では、
独身で持ち家を持たず、生涯の賃貸暮らしを覚悟しているとのことです。
彼は、自分の生活に回す経済力を持たず、
恋愛をする時間も惜しんで世界をよくする活動をしています。
 
だけど私の目には、彼は世界一幸せな人々の一人であるように映るのです。
 
この本の扉にこんな言葉が書かれていました。
 
 人生で
 満足させなければならない相手は
 自分自身だけ。
 自分が正しいと思うことをして、
 その気持ちに正直になればいい──。