「心」に「マクスウェルの悪魔」を

マクスウェルの悪魔」をご存じでしょうか?
これは、スコットランドの物理学者ジェームス・クラーク・マクスウェルが提示した
熱力学に関する思考実験です。
 
どのような思考実験かと言うと、
(1)均一の温度の気体で満たされた容器を用意する
   (統計的に温度は一定でも、気体の分子の速度はそれぞれバラバラ)
(2)容器に小さな穴の空いた仕切りを入れる
(3)その仕切りは、気体の分子を観測し、
   素早い分子のみを右へ、遅い分子のみを左へ通す
(4)そうすると、仕切りより右は温度が高くなり、
   仕切りより左は温度が低くなるはず・・・
 
補足しますと、
温度とは、気体分子の持つエネルギーのことであり、
エネルギーの高い分子は、より空間を素早く動いてことになります。
ですから、素早い分子と遅い分子を、それぞれ左右どちらかに寄せれば、
温度の高い空間と温度の低い空間ができあがるという訳です。
(詳しくはウィキペディアをご覧下さい)
 
この思考実験が成立するとなると、「熱力学第二法則」が破られてしまいます。
熱力学第二法則」とは、エントロピーは常に増大するということ。
すなわち、熱いお湯を室内に放置するとお湯は冷めますが、
お湯が部屋の温度を奪って更に熱くなることはないという不可逆性に関する法則です。
 
また、この「マスクウェルの悪魔」が成立すると、永久機関を作ることも可能となります。
 
「そんなはずはない!」と、
多くの科学者達が「マクスウェルの悪魔」を解決しようとしましたが、
なんと提唱から100年以上完全な答えが出ず、
1980年になってようやく解決することができたのです。
 
詳しくは、ウィキペディアを見て頂きたいのですが、
この問題への解決として、
「観測」することに関わるエネルギーの存在が明らかとなりました。
また、この難問と格闘する過程で、
現在の情報科学に関する重要な知見も見出されたのです。
例えば現在では、「情報」はエネルギーに変換できるという研究結果も提出されています。
 
さて、この「マクスウェルの悪魔」。
無生物の世界においては、
無償で情報を「観測」して選別してくれる悪魔は存在しないことことがわかった訳です。
実現していたらエネルギー問題も解決できるし、よかったんですけどね。
 
ところで私は、この「マクスウェルの悪魔」の情報を見た時に、
「心」にも応用できないかなと考えたことがあります。
すなわち、自分の「心」のエネルギーが上がるよい情報だけを「心」に入れ、
自分の「心」のエネルギーを奪うネガティブな悪口のような情報は「心」に入れない。
そうすれば、見事「幸せ」永久機関が完成します。
 
はたして、「心」に「マクスウェルの悪魔」を住まわせることができるのか?
「完全には無理だな」と、今は感じています。
なぜなら、「プラスの情報」か「マイナスの情報」かを「観測」するのは、
「悪魔」ではなく「私」達自身だからです。
よい情報であれ悪い情報であれ、
「観測」した瞬間に、その情報は瞬間的に「心」に浸透してきます。
 
だけど、それらの情報を記憶として残すかどうかの判断は、
「私」ではなく「無意識」がやってくれます。
うまく狙ってコントロールすることはできませんが、
マイナスの情報はいつか消去(忘却)される訳です。
言わば、「無意識」が「マクスウェルの悪魔」の役を担ってくれているということになります。
 
しかし、そういった「忘却機能」による蓄積情報の取捨選択ができても、
人は一向に「幸せ」な状態にはなれない訳です。
なぜなのでしょう?
一つは、忘却するまでにはタイムラグが発生する訳で、
忘却するスピードでは間に合わないくらい多くの「マイナス情報」が
「心」に侵入してきているということがあると思います。
 
「無意識」の持つ「忘却機能」だけでは間に合わないとしたら、どうしたらよいか?
「私」達の「意識」の側でも、
「マイナスの情報」というゴミの分別を手伝わないといけないと思います。
 
「私」達の「意識」にできることは「評価」。
「マイナスの情報」の中で、プラスの情報資源としてリサイクル活用できるものはないか?
リサイクルできないものは、「忘却」を待たずに「心」の「焼却炉」に放り込んでしまう。
 
さて、「マイナスの情報」を「心」の「焼却炉」に放り込むにはどうしたらよいか?
「マイナスの情報」をゴミとして扱うことです。
「心」を鬱にするような各「マイナス情報」に、ゴミ分別のシールを貼ります。
・リサイクルできる「資源ゴミ」
・すぐに焼却できる「可燃ゴミ
・焼却できない「不燃ゴミ」や「粗大ゴミ」
 
不燃ゴミ」や「粗大ゴミ」については、
その存在を嘆くのでなく、どうしたら「可燃ゴミ」に分解できるかのみに頭を使う。
相手は単なるゴミなんですから、あなたが悩まされる必要はありません。
どう料理してやろうか考えればよいだけなのです。
可燃ゴミ」に分解する過程で、もしかしたら「資源ゴミ」も出てくるかも知れません。
だいたい、「不燃ゴミ」は、「資源ゴミ」を取り出すことで、
可燃ゴミ」にすることが可能です。
「粗大ゴミ」も「可燃ゴミ」レベルまで細かく分解する。
 
こういった流れを構築することで、「心」を「幸せ」にする機関が完成する訳です。
まあ、本当は「マクスウェルの悪魔」的な存在を雇って、
そいつに肩代わりをしてもらえれば楽なのですが、
どうやらそこは自分でエネルギーをかけて行うしかありません。
なかなか、「幸せ」永久機関を作るのは難しいようですね。
 
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