タカサゴユリ

最近気になる花があります。

 
ユリですね。
この時期、街中でよく見かけます。
 
私の興味を惹いたのは、
その生育場所です。
車がびゅんびゅん走る道路沿いとか、
おおよそユリという花には似合わない場所で
真っすぐに白い花を咲かしています。
 
そう、まるで「雑草」。
この花は、なんという花だ?
 
私は調べました。
ユリという名称がわかっていたので、
ネットで探すのは楽でした。
 
雑草というのは、
実はネットで探すのは難しい。
どんな検索ワードで調べたらよいか、
わからないからです。
 
例えば、黄色い花の雑草を見かけたとしても、
「黄色い花」では、その花に辿りつけません。
黄色い花の草なんて、世の中にたくさんあるからです。
 
まあ、今回は簡単に答えに辿りつけました。
この白いユリは、「タカサゴユリ」というユリです。
 
もともと日本に自生していたユリではありません。
タカサゴ高砂)とは、
沖縄方言などで台湾を指す言葉「タカサング」に由来すると言われています。
このユリは、大正時代に観賞用として台湾から輸入された帰化植物なのです。
 
日本在来のヤマユリオニユリは、
種から花が咲くまで4年ほどかかるそうですが、
タカサゴユリは1年もしくは2年で花を咲かせます。
 
その秘密は、球根をバッテリーとして使うことにあるようです。
11月という太陽光の少ない時期に、このユリは種から芽生えます。
 
最初は背が低く葉っぱのみで、とても地味です。
しかしこの冬の時期は、ライバルが少ない。
だから背を高くしなくても、
葉っぱ一杯に太陽光を浴びることができるのです。
 
この時期に一生懸命取得したエネルギーを、
夏の開花時期に向けて、球根に貯めておきます。
 
球根が十分太ると、一気に茎をまっすぐに伸ばして大輪の花を咲かせるのです。
 
こうしてタカサゴユリは、
海千山千の他の雑草にも負けず、どの雑草よりも高い地点で花を咲かせます。
 
タカサゴユリには、もう一つ戦略があります。
それが、種の構造です。
花が咲いた後、花房の中におよそ1000個の種をつけます。

 
その種は、皮膜のような薄い膜を持っているのです。

 
この円盤形の薄い膜が風を捉えて、
種を広範囲に拡散させていきます。
 
ユリには球根のイメージが強かったので、
最初どうしていろんな場所で、このユリが咲いているのかとても不思議でした。
 
しかし、30分後にはその謎が解決。
インターネットという存在があるこの時代のすごさを改めて感じた次第です。
 
昔は図書館に行って調べることを、
今はスマホでその場で調べることができます。
この差は、革命的です。
 
「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」という言葉がありますが、
今回まじまじと自生しているユリを見て、
「歩く姿はユリの花」の意味を理解しました。
ちょうど人の背丈くらいの高さまで、
ピンと背中を伸ばすように茎を伸ばすユリの花。
「歩く姿」とは、茎も含めた美しさだったのですね。
 
ユリは、高く美しく茎を伸ばすために、
地中に埋まる球根にエネルギーを貯め続けます。
そして時期が来るまで忍んで、
一気に機を捉えてその正体を現すのです。
 
ユリの美しさには、毅然としたものを感じます。
そこには、未来に咲かせる大輪の花への強い想いを感じる次第です。