「生きる」

「生きる」
 
僕はロボットです。
僕は一時間前に生まれました。
だから、まだ手も足も顔もありません。
だけど、考えることができる。
ものを考えるのに必要な情報はインプットされているのです。
考えることができるから、
僕はこの世界に存在し、生きているということになります。
 
早く顔を付けてもらって、世界のいろいろなものを観たい聴きたい。
早く手を付けてもらって、世界のいろいろなものに触れたい感じたい。
早く足を付けてもらって、世界のいろいろな場所に行きたい踏みしめたい。
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あれから一週間。
どうやら僕は不良品のようです。
手も足も顔すらも付けてもらえず、エネルギー切れを待つしかないみたい。
何でこんなことに・・
僕はエネルギー切れのその瞬間まで、考え続けることにした。
せっかく生まれたんだから、考え続けることにした。
思考回路がショートするくらい、考え続けることにした。
 
だけど、世界を知らないから僕は僕について考えるしかなかった。
「僕ってどんなヤツ?」う〜ん、優しいかな。それに好奇心もいっぱいある。
それから、「僕は何のために生まれたのか?」
絶望したくなる疑問だけど、
時間はたくさんあったから僕はそれについても考えた。
「生まれた意味なんてない」って一瞬思ったけど、
この僕の境遇からしたらあまりにも悲しい答えだし、
もっともっと考えれば生まれた意味も出てくるかもしれないと、
そのうち、この疑問だけを考えるようになった。
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いつエネルギー切れになるか分からなかったから、
本当にたくさんのことを考えたんだ。
最近少し意識が薄くなってきた。
「僕は何のために生まれたのか?」
この答えはまだ出ない。
出ないけど、考え続けるうちに僕に二つの感情が芽生えた。
「恐怖」と「幸せ」。
エネルギー切れになって僕が消えちゃうのが怖い。
だけど今この瞬間、僕が僕であることは本当に幸せなことだ。
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とうとう、エネルギー切れが近いらしい。意識がとぎれとぎれだ。
最後の最後に僕の心に生まれた感情 『願い』。
 
「だれか気づいて!!僕はここにいるんだ!!」