「日本」という社会で「自己実現」するために

過去のブログでも何度か紹介しましたが、
マズロー欲求段階説というものがあります。
人間の欲求には、食欲や睡眠欲のような低次なものから高次なものまであり、
低次な欲求が満たされないと、高次な欲求を持つことができないとする説です。
そして、最も高次な欲求は「自己実現」の欲求であるとし、
「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」としています。
ウィキペディアこちらです。
 
さて、「自己実現」とはどのようなものでしょうか?
例えば、一生懸命勉強して、いい大学に入って、いい会社に入って、一生懸命仕事して、
誰よりも早く昇進して、たくさんの蓄えを残し、豊かな老後を送ることが
自己実現」でしょうか?
「う〜ん・・どうだろう?」と、首をかしげる方も多いかもしれませんね。
自己実現」という言葉はよく知られていても、
その本質までは深く知られていないのが実態です。
 
上記ウィキペディアによると、
自己実現」とは、
「自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものになる」
ことなのだそうです。
ならば、「自己実現」するためには、「己」を知ることが必要となります。
はたして自分は、どんな「才能」を持っているのか?
しかし、自分の「才能」を発見するなんて、そうそう簡単にできることではありません。
まず、自分は「才能」ある存在であると、自分を「承認」することが必要です。
そうやって考えていくと、
確かに「自己実現」の欲求を持つために必要な1段階下の欲求は、
「承認」の欲求だったりします。
そして、この「承認」の欲求は、
他者からの評価よりも、「自分自身」の評価が重要とされているのです。
 
じゃあ、自分を「承認」するにはどうしたらよいのでしょうか?
まず、「他者」からの自分に対する身勝手な上っ面だけの評価から
解放される必要があると、私は考えます。
自分を本当に知るのは、自分だけなのです。
「他者」からは、表面の「結果」しか見えない。
そこに至る「過程(努力の経緯や挫折の事情)」まで全部見えるのは、
世界でただ一人あなただけなのです。
「他者」があなたを評価している部分は、
あなたの「氷山の一角」に過ぎないと知る必要があると思います。
 
この観点から言うと、日本の社会は非常に「自己実現」しづらい社会です。
日本の社会は、「社会」や「組織」が「個」をよく飼いならしています。
「えっ?飼いならされた覚えなんてないよ!」と思うかもしれませんが、
偏差値の上下で一喜一憂した覚えはありませんか?
偏差値の高い学校や一流企業に行った同級生を羨んだことがありませんか?
 
日本人が「社会」に飼いならされている証拠はまだまだありますよ。
例えば、「対人恐怖症」は、「恥の文化」を持つ日本において群を抜いて多く、
日本特有の文化依存症候群とされ、
海外においてもそのままTaijin kyofusho symptoms (TKS) と呼称されているそうです。
対人恐怖症のウィキペディア
ついでに言えば、日本の社会問題とされている「引きこもり」も、
重度の「対人恐怖症」が原因となっています。
そういえば、20代の就職失敗での自殺者は、
2007年から2010年までの3年間で2.7倍に増加したそうです。
ニュースでは全く報道されませんが、
2010年には153人の方が就職失敗によって自殺という選択肢を選んでしまっています。
(警視庁「平成22年度における自殺の概要資料」より)
 
日本の不幸は、他者があなたの評価を決めていることなのです。
たかだか就職に失敗したくらいで、
社会に「お前は生きている価値のない人間だ」と評価されてしまう。
そして皮肉なことに、就職しても「仕事の失敗」で81人の20代の方が自殺をされています。
ある意味「個」にとっては、
就職しても就職しなくても自殺するほど厳しい環境が待ち受けています。
それもこれも、自分の評価を「社会」や「組織」が行うから、
自分には生きる「価値」がないと本人が思い込んでしまう訳です。
 
昔みたいに、会社が個人をちゃんと面倒見てくれる「社会」だったならまだましなのですが、
今は、派遣社員やパートさんなど非正規雇用が圧倒的に多いのが現状。
そろそろいい加減、自分の評価者の地位を「社会」や「他者」から奪い返す時期です。
 
先日のブログ「自営幸福論」で描きましたが、
ムハマド・ユヌス教授は、祖国バングラディシュで、
高利貸しによって経済的に苦しめられていた女性達を、
グラミン銀行を活用して「自営」させ、彼女達を「幸せ」にすることに成功しました。
あまり論じられていませんが、彼女達の「幸せ」の源泉は「自己実現」です。
高利貸しによって、または男性社会によって、
自分達の価値観や時間を支配されていた女性達。
自己実現」することができた彼女達は、
決して安いとはいえない利息のローンを怠けずにしっかりと返済していきます。
 
一方、日本の個人も「社会」や「組織」に支配されています。
他者からの評価を苦にして自殺する人がこんなに多い社会ですから、
バングラディシュの貧困の状況に同情している場合ではないかもしれません。
恐らく、グラミン銀行によって「自営」できた彼女達の方が、
今の苦しんでいる層の日本人より「幸せ」ですらあるでしょう。
 
そこで、以前にも「自営幸福論」で論じたとおり、日本人の「幸せ」のため、
日本においても「自営」という選択肢を大きく開拓していくべきだと私は考えます。
 
私は、ムハマド・ユヌス教授の偉業の本質を、
「自営」による「自己実現」を社会の中で仕組み化したことにあると見ています。
 
自己実現」とは、
「自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものになる」
ということです。
どうでしょうか?
「自営」という道は、「自己実現」に適していると思いませんか?
「自営」では、自分の才能を自分で「承認」することができます。
そして、その才能を誰にも文句を言われず咲かすこともできるのです。
 
たとえ、生活するのが精一杯の苦しい経済状況になったとしても、
今の会社生活から「自営」に切り替えて「自己実現」したい人は
多いのではないでしょうか?
なにしろ、今の日本の社会は「自殺」するほど苦しい
「幸せ」には適さない環境なのですから。
ちなみに先進主要国(G7)で、
20代と30代の死因のトップが「自殺」という国は日本だけです。
 
是非、日本の社会にも「自営」という選択肢の整備を!
バングラディシュに続け!!
 
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