『大人になってアンパンマンを卒業したあなたへ』

『大人になってアンパンマンを卒業したあなたへ』(優しい小説)
 
こんにちは。
もう君は大人になったかな?
 
もし、大人になったって言うのなら、
あなたに大事なメッセージがあるの。
それは、アンパンマンについてのお話よ。
 
あなたは、アンパンマンの存在を今でも信じている?
え?アンパンマンなんて架空のキャラクターじゃないかって?
確かに、彼も今は現役ではないわ。でも、昔はちゃんと活躍してたんだよ。
そう。アンパンマンは確かに実在している。
 
順を追って話しましょう。
ある日、ジャムおじさんが亡くなってしまったのよ。
それはもう、皆涙を流して悲しんだわ。あのバイキンマンでさえね。
 
そしてジャムおじさんが亡くなって、一つの大きな問題が発生したの。
皆も知っているとおり、アンパンマンの顔を創れるのはジャムおじさんだけだから、
アンパンマンは、もう二度と新しい顔をつけられなくなってしまった訳なのね。
それでも、アンパンマンはお腹がすいて泣いている子を見過ごすことはできなかった。
彼は、もう最後の顔だとわかっていても、子どもたちに自分の顔を食べさせたのよ。
 
結局、アンパンマンの顔は元の3分の1くらいになってしまったわ。
それでも、アンパンマンはお腹がすいている子どもをまた一人見つけて、
「僕の顔をお食べよ」と、その泣いている子に自分の顔を食べさせたの。
そして、とうとう最後の一口。
この最後の部分を食べたら、アンパンマンはこの世界からいなくなってしまう。
 
「ハ〜ヒフ〜ヘホー!」
「ちょっと、待った〜!!」
そこに現れたのが、バイキンマン
「ほら、これを食べるのだ」
バイキンマンは、子どもに自分のお菓子をあげたのね。
そして、その子を親のところに送り届けてから、アンパンマンのところに戻ってきたの。
 
アンパンマン、もう無茶するな。俺様がパン工場に送ってやるから。」
「ありがとう、バイキンマン。」
 
そうやって、アンパンマンバイキンマンのUFOに二人乗りして送ってもらったのよ。
アンパンマン、もう新しい顔はないんだから、
 子どもに顔を食べさせるのはやめるのだ。」
バイキンマンは、アンパンマンに優しく話しかけたんだけど、
「もし、お腹をすかして泣いている子を見かけても、
 君はそのまま通り過ぎてしまうのかい?
 僕には、そんなことはできないよ。」
アンパンマンは首を横に振って答えたんだって。
「・・・・・・・・」
バイキンマンには、それ以上アンパンマンにかける言葉が見つからなかったそうよ。
 
ところで、バイキンマンは打倒アンパンマンのために、
ある装置を秘密に開発していたの。
その装置の名前は、「てれび」。皆に言葉や映像を送れるすごい機械なの。
バイキンマンは、この「てれび」を使って、
アンパンマンの悪口を世界中に広めようとしていた訳ね。
実はバイキンマンは結構前から、アンパンマンの失敗するところを皆に伝えてやろうと、
「かめら」という機械に、アンパンマンをずっと撮影させていたの。
 
今回、すんでのところでアンパンマンを助けに入れたのも、
この「かめら」からバイキン城に送られた映像のお陰って訳。
 
その後バイキン城に戻ったバイキンマンは、いよいよ「てれび」を使おうと決心したの。
アンパンマンの最後の顔の活動映像を編集して、そして自分のメッセージも加えたわ。
映像のタイトルは、「アンパンマンを救うのだ!」。
その日のうちに、映像は世界に発信されたのよ。
 
世界中の人は、映像を見て、
アンパンマンがあと少しでこの世界からいなくなってしまうことを、心から心配したわ。
そして、映像の最後の匿名のメッセージを聞いたのよ。
 
「ハ〜ヒフ〜ヘホー!
 このままじゃ、アンパンマンは消えてしまうのだ!
 そうならないように、お腹をすかして泣いている子がいたら、
 皆で持っている食べ物をあげて、その子を親の元に送り届けてやるのだ!!」
 
世界中の人は、誰でも子どもの頃に一度はアンパンマンに助けてもらっていたのね。
だから、皆その提案に心から賛同したわ。
「私は、いつもアンパンを持ち歩くようにするわ!」
「俺は、おにぎりを作って外出するようにするよ。」
「おいらの自慢のサンドイッチを子どもたちに味わってもらおう!」
「僕もおやつを我慢して、おやつをポッケに入れておくようにするよ!」
 
そうやって決心すると、皆がアンパンマンのいるパン工場に押し寄せたのよ。
アンパンマン!今までありがとう!!
 あとは、僕達に任せて!!!」
 
その時の、アンパンマンったら可笑しいの(笑)。
もう子どもみたいに大泣きしちゃって。
正義のヒーローじゃなくて、まるで助けられた子どもみたい。
 
結局、アンパンマンは皆の言葉に感謝して、引退を決意したのね。
 
そして、そこから世界が変わったわ。
いつしか「アンパンマン運動」という名前がついて、
親からはぐれてお腹をすかして泣いている子の面倒を、皆が見るようになったのよ。
なんて言えばいいのかな。世界が本当によい雰囲気に変わったのよね。
皆が笑顔になって、世界がとても素敵になったわ。
そして時が経ち、
アンパンマン運動」は「アンパンマン革命」と名前を変えて語られるようになった。
 
それからね。
バイキンマンはどうしていたかと言うと、
ライバルのアンパンマンが引退しても、相変わらず忙しそうだったわ。
彼はアンパンマンが活躍していないことが寂しいらくして、
アンパンマンを知らない世代の子どもたちに、
「てれび」を使ってアンパンマンの活躍を見せてやろうと、
「あにめ」という技術を開発したのよ。
この「あにめ」って技術もすごいの。本当にあの頃のアンパンマンが戻ってきたみたい。
だから、今でもアンパンマンが好きな子どもは多いでしょ?
バイキンマンの努力のお陰ね。
 
ところで、今お話したことは、実は、はるかはるか昔のお話なの。
バイキンマンは今でも頑張っているけど、
もうアンパンマンの存在を信じているのは、小さな子どもだけになってしまったわ。
今は、あなたも信じていないでしょ?
そして、「アンパンマン革命」の存在も永い永い時の中で忘れ去られてしまった。
 
今のこの世界のことを、アンパンマンバイキンマンもとても心配しているわ。
親が一緒にいても、子どもがお腹をすかして泣いているし、
本当に信じられないんだけど、
子どもがお腹をすかしすぎて死んでしまうニュースも流れているわ。
本当にあり得ない!
アンパンマンバイキンマンも涙を流して悲しんでいたわ!!
 
だから、バイキンマンのアシスタントのわたしが、
大人になってアンパンマンの存在を信じなくなってしまった人たちに、
メッセージを伝えることになったのよ。
 
みんな、「アンパンマン」が大好きだったあの頃を思い出してね。
アンパンマン」の優しさを、小さい頃はみんなも愛していたのよ。
そして、世界中の人たちが起こしたあの奇跡「アンパンマン革命」。
みんなの心にアンパンマンが戻ってきたら、また絶対起こせるはずよ。
 
だから思い出してね。あなたの心の中のアンパンマンを。
 

 
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