名実ともに「悪い」雑草

「ワルナスビ」という雑草をご存じでしょうか?
 
漢字では、「悪茄子」と書きます。
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その名の通りナス科の多年草です。
外来生物法により、要注意外来生物に指定されています。
原産地は、アメリカ合衆国の南東部です。
 
日本では、1906年に千葉の牧場で初めて発見されました。
以降は、北海道から沖縄まで全国に広がっているようです。
 
夏頃に注意深く道ばたを観察すると、
「ワルナスビ」の星形の白い花を見つけることができます。

 
白と黄色のコントラストが鮮やかで、
結構存在感のある花です。
私は昔、江東区の街路樹の植栽で見つけました。
 
花の後につける実は、こんな感じです。

 
黄色いプチトマトのようで一見食べられそうですが、
全草がソラニンを含み有毒であるため食用にはできず、
家畜が食べると場合によっては中毒死することがあります。
 
「毒があるのか・・・」
これだけで悪い感じがしますが、
この雑草の「悪さ」は、これだけで終わりません。
私が知っている雑草の中でも、最大限に「悪い」ヤツです。
 
以下に、残りの「悪さ」を列挙しましょう。
(1)爆発的な繁殖力
 全身に毒があるため、牧場に生えると本当にやっかいなのですが、
 この草、ものすごい繁殖力なのです。
 垂直および水平に広がる地下茎を張ってあっという間に繁茂し、
 耕耘機などですきこむと、
 切れた地下茎の一つ一つから芽が出てかえって増殖してしまいます。
 また除草剤も効きにくいため、一度生えると完全に駆除するのは難しいです。
(2)全身にトゲ
 長さ約1cmの鋭いトゲが、茎全体や葉柄などにあります。
 このトゲのお陰で、うっかり踏み込んだ人や家畜が怪我をすることもありますし、
 草むしりで簡単に引き抜くこともできない訳です。
(3)害虫を呼び寄せる
 このワルナスビが畑の周囲に群生すると、
 同じナス科のトマトやジャガイモに被害を与える害虫の温床になります。
 ニジュウヤホシテントウホオズキカメムシといった害虫です。
 特に臭いカメムシも呼び込んでしまうため、
 畑だけでなく庭に生えていても迷惑となります。
 
「ワルナスビ」は英語でも、
Apple of Sodom(ソドムのリンゴ)」、「Devil's tomato (悪魔のトマト)」
という悪い呼び名をもらっているようです。
 
ただ花言葉だけは、手加減してもらっています。
「悪戯(いたずら)」という少し可愛い花言葉です。
 
まあ、この「ワルナスビ」も必死で生きています。
人の手を借りず、人に忌み嫌われながらも、力強く生きているその姿には、
私達にも少し見習うべき点があるような気もするのです。
 
食用の野菜のような人に好かれる植物は
人との共存によって生きながらえますが、
「ワルナスビ」のように人の役に立つ要素を持っていない植物にとっては、
なりふり構わずに生きる力こそが正義となります。