もの言わぬ「雑草」

植物には、花を咲かす適例時期というものがあります。
 
虫に花粉を運んでもらう植物であれば、
虫が多く飛び交う春や夏が、花を咲かす適例時期です。
 
植物は、自家受粉でなく、他の株の花粉を受粉したいと考えているので、
同じ種類の植物は、申し合わせたように同じ時期に開花します。
 
それは植物に、体内カレンダー的な機能があるからできる芸当です。
気温や日照時間の環境データを活用して、植物は自分の花を咲かす時期を決定します。
 
人間には体内カレンダーはないので、
人は太古の昔から植物の花に季節を教えてもらっていたのです。
 
「雑草」に興味を持っている私は、
「雑草」の花を見て、季節を感じることができるようになりました。
 
「ああ、もうオオイヌノフグリが咲く時期か・・・」というような感じです。
 
厳しい冬が過ぎて「雑草」が咲き出す季節になると、
私は少しウキウキした気持ちになります。
「雑草」達の「待望の季節が来た」という浮かれた気持ちを
お裾分けしてもらっているようです。
 
さて、虫に花粉を運んでもらうことを期待して、
多くの「雑草」が、虫の多い春や夏に花を咲かせる訳ですが、
秋に花を咲かせる「雑草」も結構あります。
 
そういった「雑草」の多くは、
夏に葉っぱを広げて十分に栄養を付けてから満を持して秋に花を咲かせるスタイルです。
 
しかし、これら秋に花を咲かせる「雑草」の中でも、
ヒガンバナはちょっと変わっています。
(参考文献「植物のあっぱれな生き方 生を全うする脅威のしくみ(田中修著)」)
 
ヒガンバナが花を咲かせる時期は、その名の通り秋のお彼岸の時期です。
秋にツボミが地上に出て、真っ赤な花を咲かせます。
他の花が少ない秋の時期に一斉に真っ赤な花を咲かせるので、かなり目立つ存在です。

 
しかし、花を咲かせている時期に葉はついていません。
地面から真っ直ぐな茎が出て、てっぺんに大きな花があるのみです。
 
光合成をするための葉っぱを、一体いつ出しているんだろう?」という疑問が湧きます。
実は、秋に花が咲いた後に、細く目立たない葉っぱを生やすのです。
冬の寒さの中で、ヒガンバナは葉を青々しく茂らせています。

 
もちろん本当は、夏の日差しの方がガンガン光合成できるのですが、
冬には他の雑草が枯れて競走が激しくないので、
ヒガンバナはこの厳しい時期に葉を茂らせる訳です。
 
どの「雑草」も、本当に戦略的に生きているなぁと感嘆します。
 
もの言わぬ「雑草」たちの逞しい生き様を見ていると、
ああ自分も頑張らなければと想うのです。
 
「雑草」は、不平もグチも言いません。
ただただ自分の与えられた環境で、「生きる」ことを精一杯実行するのです。
 
その「生き方」は、私の美意識に適います。
割と数奇な環境で生きている私という「雑草」も、
ヒガンバナを見習って、どんな厳しい環境下でもそこに活路を見出し、
精一杯生ききってやろうと想うのです。
 
そして、「お金」でも「名誉」でもない、自分だけの「花」を咲かせようと想います。