「心」の「痛み」の鎮痛方法

「言葉」は物理法則とは違う形の「力」を持っている、と私は考えます。
時に、他者から発せられた一発の「言葉」が、一日中あるいは一週間、一ヶ月、一年、
もしかしたら一生、その人の「心」に精神的な「痛み」を与え続けることがあるのです。
 
物理法則とは異なるその精神的な「痛み」も、
その人にとってはリアルな「痛み」であることは間違いありません。
 
皆、そういった「心」ない「言葉」の銃弾を撃たれた経験が、あるのではないでしょうか。
 
この「痛み」が続いているうちは、「痛い!」「痛い!」と騒いでいても、
決して解消されることはありません。
 
最初の会社でイジメにあい、そのイジメの首謀者を3年間恨み続けた私には、
そのことが身をもってわかるのです。
相手を恨むという行為は、
自分で「心」に突き刺さった銃弾をグリグリいじるのと変わりがありません。
 
恨めば恨むほど、「痛み」は増すのです。
恨みというものは、「この痛み忘れるものか!」という行為だから当然のことですが。
 
この「痛み」を消す方法は、基本的にはおとなしく時の経過を待つしかありません。
 
しかし「痛み」が長く続くような場合は、より積極的な治療が必要になる訳です。
致命的な箇所に当たってしまった銃弾や、悪意の示威という毒を仕込まれた銃弾が、
そういった継続的な「痛み」を継続させます。
相手を傷つけることを意識して放たれた銃弾は、
長く「痛み」が継続するように作られていますから。
 
例えば私は、実家に帰って家族と買い物をしている時にも、
ある他者から放たれた「言葉」のことを、ずっと考えていたことがあります。
久しぶりの両親との時間なのに、その間ずっと上の空でした。
 
こういった長引きそうな「痛み」を取り去るのに、
「時間」の経過を待つのは建設的ではありません。
逆に「恨み」を発症し、傷口が化膿していく恐れもあるのです。
 
ですから、その「痛み」を能動的に解消する方法を、今からご案内したいと思います。
化膿させた「痛み」の経験数知れずの私が、ようやくたどり着いた解答です。
多分この方法以外には、「痛み」を解消する方法はないと思います。
 
一つ押さえて欲しいポイントは、
物理的もしくは精神的に相手に復讐をしたとしても、
その銃弾の「痛み」は癒えないということです。
 
そうではなくて、その銃弾を受け入れるという方法を採ります。
 
その銃弾に「悪意」があろうと、なかろうと、
その銃弾は既に私(あなた)の体内に食い込んでいるのです。
ですから、自分の「心」の一部として、その銃弾に接しないといけません。
 
その証拠に、撃った相手はその日の夜には撃ったことを忘れているかもしれないのです。

その銃弾が、あなたの「心」の中で存在感を発したということは、
あなたの「心」にとって反応する「意味」のある「言葉」なのだと思います。
ある意味、あなたに必要のある「言葉」なのです。
 
いきなり自分の「心」の中に、他者の攻撃性を持つ異物が入り込んでくるのですから、
そりゃあ、相応の拒絶反応は起こります。
しかし、その拒絶反応の向こうに、
自分の「心」には存在していない未知の成分が含まれているのです。
 
それは、相手の「心」。
自分には元々与えられていなかった感性。
自分には元々用意されていなかった経験。
 
どんな気持ちで、相手がその銃弾を発射したのか?
 
ある尼さんの話によると、
喧嘩とは「相手にわかって欲しい」という気持ちから起こるのだそうです。
 
自分に打ち込まれた銃弾にも、その想いは込められています。
 
「なぜ、相手はその銃弾を撃ったのか?」
その背景をよく想像し、そして自分の至らぬところに気づきましょう。
親切にも相手は、その至らないところに狙いを定めて撃ってくれているのです。
 
私は銃弾を撃たれたとき、こんな想像をすることに決めました。
相手が自分の心臓に向けて、銃を発砲するシーンです。
その時の相手の顔を凝視します。
 
「怒り」や「冷酷」の仮面の後ろに存在する「悲しみ」の「心」を感じられるように。
自分の何が、相手を怒らせてしまったのか?
そして大きな「怒り」の背景には、いつも「悲しみ」が存在するのです。
相手を悲しませてしまった自分の至らなさに、十分に想いを巡らせたいと考えます。
 
そうすることで、
自分の「心」に撃たれた一発の銃弾が、自分の「心」の一部になっていくのです。
そしてようやく、「心」の「痛み」は解消します。
 
どうでしょうか?
この鎮痛方法は、結構役に立ちそうだと思いませんか?
コツは、撃った瞬間の相手の顔をよく想像することです。
 
ただ忘れてはいけないポイントが一つあります。
これはあくまで自分の「心」に打ち込まれた銃弾への対応方法です。
相手が撃った弾丸は、既に自分の体に撃ちこまれて、自分のものになっています。
だから例え外部からの異物であっても、自分の「心」のコントロール下に入る訳です。
 
「この弾丸は相手の所有物だ」と思い込んでいる間は、
自分の「心」のコントロールが利きませんので、ご注意ください。