キジバトは、美しい

朝に、「ホーホホーホホ♪ ホーホホーホホ♪ ホ・・・」という鳥の鳴き声を、
聞いたことがありませんか?
一度聞いたら忘れない、とても特徴的な音階です。
 
文字で書いても伝えるのが難しいので、
動画も貼ります。

 
この鳴き声は、キジバトの鳴き声です。
キジバトのオスは、朝に自分の縄張りを主張するためにこんな声を出します。
 
最近は、便利な世の中ですね。
言葉で伝えられない音や光景も、動画で伝えることができます。
後は、匂いも伝えることができれば完璧なのですが・・・。
 
考えても見て下さい。
私が、ここにステーキを焼く動画を貼るとします。
その動画に鼻を近づけるといい匂いがしてきたら、最高だと思うんですよね。
 
最近は、バーチャルリアリティの技術も凄まじいことになっていますが、
匂い(と味)の再現技術だけは、まだまだ実現不可能なように感じます。
 
もちろん、情報量が多ければそれでよいと言うことでもありません。
文字だけで、本当に伝えたい情緒が伝わることもあるのです。
 
「五月雨や大河を前に家二件」
さみだれや たいがをまえに いえにけん)
 
与謝蕪村の26歳の時の俳句です。
 
この風景を動画にアップしたところで、
ここまでの情緒を伝えきることはできないと思います。
余計な情報が多すぎるのです。
俳句の方が、動画よりもよっぽど伝わります。
不思議なものです。
 
ところで、私の実家の庭には、よく2羽のつがいのキジバトが来ます。
私は、彼らの模様をとても美しいと感じるのです。

 
鯉のぼりのような背中のウロコ模様。
首筋にある白と青の美しいストライプ。
 
なんでこんなガラになったのだろうと、考えれば考えるほど不思議です。
自然が創りだしたデザインは、見ていて飽きません。

 
都市部に住むドバトには様々な模様があるのに、
なぜキジバトは、模様のパターンが一つだけなのかと言うと、
以下のような理由があるようです。
 
キジバトは、日本に古来からいた在来種。
長い長い淘汰の結果として、一つの模様に辿りつきました。
 
一方で、ドバトは海外からやってきた鳩です。
一説には、飛鳥時代には日本に持ち込まれていたとも。
平安時代の書物には、「イエバト」という表記で登場します。
ちなみに、キジバトの方は「ヤマバト」と呼ばれていたようです。
 
ドバトは、堂鳩(ドウバト)が語源とも言われています。
お堂にいる鳩という意味です。
今も昔もドバトは、お寺や神社にいる鳩だったんですね。
 
さて、ドバトは平安時代以降にも海外からたびたび持ち込まれて、交雑を続けます。
特に鎖国を廃止した明治時代以降、伝書鳩として、また観賞用として、
欧米から持ち込まれたようです。
 
そういった外部からの継続的な交雑の影響で、
今現在ドバトの模様は一つのパターンに安定していません。
しかし「ハク」と呼ばれる純白の鳩は、段々と数を減らしつつあるようです。
白い鳩は人間の目には美しく映りますが、
アスファルトの都市部では灰色の鳩よりも目立ってしまい、
カラスなどに襲われやすいのでしょうね。
 
ですのでたまに「ハク」のドバトに出会うと、私は嬉しくなります。
また、灰色のドバトの模様も私は好きです。
特に首筋の構造色と言われる七色に輝く不思議な模様に惹かれます。

 

さて、どうでしょう?
キジバトやドバトの模様の美しさが、あなたに伝わりましたか?
 
与謝蕪村なら、俳句の17文字でピシッと伝えられるのでしょうが、
こんなに文字を重ねても、しっかりと伝えられたか不安です(笑)。