アマゾネスのような魚「ギンブナ」

アマゾネスは、ギリシャ神話に登場する女性だけの部族です。
黒海沿岸の他、アナトリア小アジア)や北アフリカに住んでいた、
実在した母系部族をギリシア人が誇張した姿と考えられています。
ウィキペディアは、こちら
 
基本的に女性のみで構成された狩猟部族であり、
子を産むときは他部族の男性の元に行き、交わるのだそうです。
男児が生まれた場合は殺すか、障害を負わせて奴隷とするか、
あるいは父親の元に引き渡し、女児のみを後継者として育てたといいます。
 
トロイア戦争において、アマゾネスはトロイア側についてギリシア人と戦ったそうです。
アマゾーンは女王ペンテシレイアに率いられ勇敢に戦いましたが、
女王はアキレウスに討たれてしまいます。
アキレウスは死に際のペンテシレイアの美しさを見て恋に落ち、
彼女を殺したことを嘆いたそうです。
 
さて、実は私達の身近にも、
こんなアマゾネスのような生き方をする魚がいます。
 
以下、その魚に関する生態をウィキペディアからの引用します。

ほとんどがメスであり、無性生殖の一種である雌性発生をすることが知られている。
無性生殖ではメスがクローンの子供を作るが、
雌性発生ではオスの精子が発生を開始するのに必要である。
しかし、オスの精子は発生の刺激となるだけで、遺伝的に貢献しない。
繁殖期(4月〜6月)になると浅瀬の水草等に産卵するが、
その際には同所的に生息している
有性生殖を行なうフナ類(キンブナ・ナガブナ・ニゴロブナ・ゲンゴロウブナ等)のオスと
繁殖行動を行ない、精子を得る。

 
この魚は、ギンブナです。
日本中で普通に見ることができます。
主に池沼や河川の下流など、比較的流れの緩やかな場所に生息しています。
 
上記ウィキペディアのポイントをまとめると、
(1)ほとんどメスしかいない
(2)クローンを生むので、生まれるのもメス
(3)しかし卵の中で細胞分裂を始めるきっかけとして、オスの精子が必要
   だから、他のフナ類のオスを誘惑して、精子を得る
(4)ただし、他の種族のオスの精子は、子どもに遺伝的な影響を全く与えない
   あくまで生まれてくるのは、母親のクローン
 
この生態って、アマゾネスに酷似していませんか?
ほとんどメスしかいない種族であることに加えて、
他の種族の精子を借りるあたりも、アマゾネスっぽいと思います。
 
ギンブナが、オスとメスによる有性生殖ができないのは、
細胞内の染色体数が3セット存在する3倍体だからです。
通常の動物は2倍体であり、
オスとメスがそれぞれ、自身の染色体2セットから、
1セットずつ持ちよって新しい命を誕生させることができます。
しかし、自身の染色体を3セット持っていると、
ここから1セットだけ取り出すことができないのです。
 
1セットずつ持ちよって新しい命を成すことができないので、
ギンブナは自分の染色体だけで、新しい命をつくらなければなりません。
その結果、子どもは全て自分のクローンになるのです。
 
3倍体のことは、雑草を調べていて知りました。
セイヨウタンポポや(日本の)ヒガンバナドクダミは、3倍体です。
セイヨウタンポポドクダミは、
受粉せずとも自分の子孫(クローン)をせっせとつくれるので、
現時点の自然界では有利な性質となっています。
ちなみに日本在来のタンポポは、普通に受粉して増える2倍体です。
 
しかしまあ、野生の動物にも3倍体がいることに驚きました。
しかも、こんな身近なところに。
 
アマゾネスには女王がいましたが、
ギンブナの世界ではどうなんでしょうか?
ギンブナはクローンで増える訳ですから、
もしかしたら、かつて最も強かった女性の遺伝子が、
種族シェアのほとんどを占めているかもしれません。
 
人間で例えたら、女子レスリングの強い選手とか。
そして、他の種族のオスを誘惑する必要もあるので、
魅惑的な個体が生き残っているはずです。
 
強くて美しい女性だけの種族。
知れば知るほど、ギンブナは、魚の世界のアマゾネスだなと感じます。