「漆黒の蝶」

私は、飛んでいる蝶を見るのが好きです。
 
飛んでいる蝶が視界に入ってくると、
私の注意はそこに惹きつけられます。
 
あの独特の存在感。
それは、あの美しい羽の模様や形だけでなく、
彼らの特徴的な飛び方によって、醸し出されています。
 
そう言えば、私のプロフィール写真も「アオスジアゲハ」という蝶です。
(アオスジアゲハに関する過こブログは、こちら
私の興味を大きく惹きつける蝶という存在は、
私の「生命」や「自然」への好奇心の象徴となっています。
 
さて、今日話題にしたいのは、「漆黒の蝶」です。
私は、「漆黒の蝶」を見かけるとテンションが上がります。
あの「漆黒の蝶」には、他の色彩の蝶にも勝る存在感を私は感じるのです。
 
昨日も、通勤途中に出会いました。
多分「クロアゲハ」のオスです。

まじまじとその「漆黒の蝶」を眺めていて、ある疑念が湧いてきたのです。
 
「漆黒の蝶の黒色は、自然界のどんな黒色よりも黒いのではないか?」
 
昔ネットで、
「世界で最も黒い物質がイギリスで開発された!」という記事を読みました。
詳しくは、その記事を見て頂きたいのですが、
私が驚いたのは、光の99.96%を吸収してしまうというその物質の「黒さ」です。

 
あまりの絵の不自然さに、私は最初合成画像かと思ってしまいました。
 
このネット記事を見たときに、
私は「本当の黒とはこういう感じなのか」と黒への認識を深めた次第です。
 
さて私が昨日、木々の緑の中、「漆黒の蝶」を発見したとき、
私はこの「世界で最も黒い物質」と似たような「黒」の質感を感じました。
 
皆さんも町中で「漆黒の蝶」と出くわすときがあると思いますが、
その時のことを思い出して下さい。
周囲の色彩のある風景から浮いてしまうほどの違和感のある「漆黒」。
そのコントラストが、逆に人間の目には目立ちます。
とにかく、自然界のカブトムシとか黒猫とは格が違う「黒さ」なのです。
 
黒猫を見ても光を吸収している感じはしませんが、
「漆黒の蝶」は、そこで光が吸収されているのを感じます。
 
明るい昼間でも、そこだけ「闇」なのです。
 
「闇」がパタパタと飛んでいる姿は、どこか異様な光景でもあります。
だからこそ、それを見た人の「心」を惹きつけるのでしょう。
 
黒い蝶は皆、「ジャコウアゲハ」の擬態をしていると言われています。

ジャコウアゲハ」には、毒があるのです。
ウィキペディアによりますと、

ジャコウアゲハを食べた捕食者は中毒をおこし、
遂には捕食したものを殆ど吐き出してしまう。
一度ジャコウアゲハを捕食して中毒を経験した捕食者は、
ジャコウアゲハを捕食しなくなる。

とのことです。
 
毒のある「生物」は、警戒色という目立つ色遣いをします。
捕食者に自分の存在を気づいたもらった方が、生き残る可能性が高いからです。
 
そういう意味では、
「漆黒の蝶」はわざと自然界で目立つ色遣いをしていると言えます。
そして、あの優雅とも言える危機感のない飛び方。
彼らは、他の生物の目を惹いてナンボなのです。
 
捕食者から襲われる心配の薄い「漆黒の蝶」達は、
虫の世界でも特権階級なのかもしれません。
例えばすぐに逃げるゴキブリとは違って、
なんとなくせせこましくない印象を、私は「漆黒の蝶」に感じるのです。
 
そう言えば、「アゲハチョウ」の「アゲハ」とは、
女性の着る着物の「揚げ」という仕立て方から来ています。
着物のそでを長めに仕立ててその余り部分をたたんで縫う事を「揚げ」というのですが、
「アゲハチョウ」が蜜を吸うときに羽根を上げる仕草をそれに見立て、
羽根を揚げるから「揚羽(アゲハ)」と呼ばれるようになったとか。
 
厳しい弱肉強食の輪から外れた「漆黒の蝶」達は、
他の生物たちを魅惑する美しい着物を着て、
今日も優雅に貴婦人のごとく空を舞うのです。