「魂」とは何か?

私は、「脳」科学の本を好んで読みます。
そこに、「私とは何か?」という問いへのアプローチがあるからです。
 
私は、こう考えています。
「私」−「脳」の機能=「魂」
 
「脳」科学の本を読んでいると、
様々なことを「脳」が行っていることがわかります。
 
例えば、記憶は「脳」科学で最も進んでいる分野です。
認知症の症例を見てもわかるように、
記憶に関する一連の機能は、
「脳」という物理的器官が、重要な役割担っています。
 
ならば、「魂」側は記憶を保持できないのではないかと考える訳です。
「脳」というハードディスクがクラッシュしたら、
今まで生きてきた記憶は全てこの世界から消えてしまいます。
これは、相当な時間をかけてつくったエクセルの表が壊れるよりも、
何万倍もショックなことです。
私達が一期一会でつくりだした記憶は、
宇宙に一つしかない宝石のような希少性を有すると私は考えます。
 
自由意思についても、
どうやら「脳」が生み出しているようです。
「受動意識仮説」と呼ばれる学説があります。

簡単に言うと、
私の体を動かすという指示は、
私という意識がやっているのではなく、
脳(や体)という物理的器官の総体からやってきているという考え方です。
例えば、私が手を動かそうと決定しているのは、実は私ではありません。
私が手を動かそうと考えるよりも0.35秒早く、
脳は手に筋肉を動かせと指示を出しているのです。
(詳しくは、過去ブログ「【受動意識仮説】私は、私を動かしているの?」をどうぞ)
 
私達は、思うまま自由にこの「世界」を生きているのでなく、
実は映画館で「The人生」という映画を鑑賞しているだけかもしれないのです。
まあ、めちゃくちゃリアルな映画ですけどね・・・
 
では、感情はどうでしょう?
「好き嫌い」などの情動を司っているのが、扁桃体という脳の器官です。
例えば、扁桃体が機能しないマウスは恐怖を感じなくなります。
 
「好き嫌い」やおそらく「喜怒哀楽」という感覚も、
脳という物理器官がつくりあげた幻に過ぎないと考える次第です。

最後に、「愛」についても確認してみましょう。
私は最近、「つながる脳科学」という書籍を読みました。(講談社ブルーバックス
日本の脳研究の総本山「理化学研究所脳科学総合研究センター」の学者さん達によって
最新の研究結果が書かれた書籍です。
 
その中で、黒田公美さんという研究者が愛情に関する脳科学の研究結果を執筆しています。
研究対象は、マウスの親が子に対して持つ愛情でした。
詳しい話は、是非書籍を読んで欲しいのですが、
脳の内側視索前野中央部(cMPCA)という部分の機能が低下したマウスでは、
母親が自分の子どもの面倒を見ずに殺してしまうという現象が起こります。
逆に言えば、子どもに上手く愛情を示せないマウスに対して、
この内側視索前野中央部(cMPCA)という脳部分の機能を回復させてあげれば、
親は子をちゃんと愛することができるようになる訳です。
 
もしかしたら、「愛」も脳の物理的機能から生まれているんじゃ・・・
 
今までの一連の私の文章で、「私」って何なの?と、
モヤモヤしたものを感じた人は、
是非ブルーバックス「つながる脳科学」を読んでみて下さい。
全体的に内容に難しい部分もありますが、最後の黒田公美さんの章だけでも必見です。
他の章も、非常にエキサイティングだと思いますけど。
 
・・という訳で、こんなにいろんなことを「脳」がやっているなら、
「魂」なんて存在しないんじゃないの?という結論になってしまいそうですね。
しかし私は、そういう結論を用意しておりません。
 
じゃあ、この「私」を体験している「私」は何なの?って話です。
夕日を見たときに「赤い!」と感じる私。
はたしてロボットが自分のカメラ・アイで夕日を見て「赤い!」と感じるでしょうか?
 
それに、「私は確かに今ここにいますよ!」という実在の感覚。
うまく説明できないですけど、「魂」のある人にはわかりますよね?
「私!」というこの感覚です。
 
その感覚も「幻」に過ぎないんだよって説明をする人もいます。
ならば聴きたいのは、その「幻」を見ているのは一体誰なんですか?という話です。
 
タマネギの皮をむいていって最後に残る何か。
絶対に除去できない何か。
 
私は、今後も脳科学の書籍を読み続けて、
「私」とは何か?を探っていきたいと想います。