「常識」を疑え!

ピロリ菌という名前の菌をご存じですか?
印象に残る名前なので、知っている人も多いかもしれませんね。
胃潰瘍の原因となっている菌です。
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さて、この菌は、1983年にバリー・マーシャルによって発見されました。
最近、メジャーデビューした菌なのです。
この菌が発見されるまでは、胃潰瘍はストレスが原因だと考えられてきました。
胃の内面は胃液の中の塩酸によって強酸性であるため、
細菌が生息できない環境だと考えられていたのです。
しかし、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産み出し、
この酵素で胃粘液中の尿素アンモニア二酸化炭素に分解しています。
この生じたアンモニアで局所的に胃酸を中和することで、
過酷な胃の内部での生存を可能としているのです。
この菌の発見により、動物の胃に適応して生息する細菌の存在が、
初めて明らかにされました。
 
さて、このピロリ菌の発見時のお話しをしましょう。
ある日若き研修医のマーシャルは、
潰瘍の部分に、いつもこのピロリ菌が存在していることに気付いたそうです。
もしかしたらこの菌が胃潰瘍の原因菌ではないかと考えた彼は、
教授にそのことを話します。
しかし教授は、
「とんでもない。そんなはずはない。その菌は潰瘍部分に二次感染した菌に過ぎない。」と、
彼の考えを否定したのだそうです。
 
納得できなかったマーシャルは、独自に研究を進め、
やはりピロリ菌が胃潰瘍の原因であるという確信を持つに至りました。
しかし、胃潰瘍の原因はストレスというのが当時の「常識」であり、
彼の考えは、周りの研究者から全く受け入れられなかったそうです。
やっきになった彼は、
なんと培養した細菌を自ら飲み下し、身をもって実証しようとしました。
はたして数週間後、内視鏡検査を行うと、胃腸のあちこちに潰瘍ができていたそうです。
(ただし、後でちゃんと治癒しました。)
 
この発見により、抗生物質による除菌という胃潰瘍の治療方法が確立した訳です。
マーシャルが周りの「常識」的意見に押され、自身の説が誤っていると感じてしまったら、
今でも胃潰瘍の原因はストレスであると言われていたかもしれませんね。
 
「常識」は正解への道しるべになることも多く便利な存在ですが、
人の思考を停止させる目隠しになるという弊害も持っています。
そして、何故か感情的に「常識」の肩を持つ人が多いのです。
その人達は、「常識」と違うことをする人を「非常識」と言って嫌います。
「常識」とは、単なる最大公約数の多数派の考えや意見に過ぎないと思うんですけどね。
 
ところで、私は「幸せ」な人生を送るためには、
「常識」を破る力が必要だと考えています。
なぜなら、人の「心」はそれぞれ違うからです。
最大公約数の考えに従っているだけでは、自分の「心」に負担や軋轢が生じてしまいます。
例えば、イスラム教という「常識」は、
女性に目と手足の先以外を全て隠す衣装を強制します。
また、サウジアラビアでは女性の運転免許取得を禁止しています。
こういう環境では、「女性」に多大なストレスを与えている可能性があるでしょう。
イスラム教という極端な例でなくても、
日本にだって理不尽な「常識」は結構存在します。
「うさぎ跳び」なんかは、典型的な誤った常識でした。
現在は医学的見地から有害とされている「うさぎ跳び」ですが、
1980年代以前は、
体育会系部活の必須トレーニングメニューとして、
育ち盛りの高校生や中学生が皆「うさぎ跳び」をやっていました。
 
私は、常々このブログで、自ら「考察」する力をつけましょうと言っていますが、
目標としては、「常識」を破れるほどの「考察力」が必要だと考えています。
「常識」は確かに正しいことも多いですし、
多くの人の意見として「常識」を尊重する必要はありますが、
「常識」に盲目的に従っていては、自分の道を開拓することは不可能です。
個々人の「幸せ」は常識を破った先にあると、私は信じています。
 
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