「ウサギとカメ」

「ウサギとカメ」のお話は、皆さんご存じだと思います。
優れた「才能」を持つ「ウサギ」が、
「カメ」を見くびり油断をして、競争に負けたというお話です。
ウィキペディアこちら
 
この寓話の教訓は何でしょうか?
「油断は禁物だよね」というくらいにしか、私は捉えていませんでした。
(余談ですが、この寓話は明治時代の教科書にも掲載されていました。
 掲載されていたタイトルも「油断大敵」でした。)
 
さて、福島正伸さんの講演を聴いた翌日、皇居ランをしている時に、
ふと「この寓話には、もっと深い意味があるよな」と気付いたのです。
 
まず、「カメ」に注目します。
はたして、「カメ」の勝因は何だったのでしょうか?
「頑張った」ことは、勝因ではありません。
もっと根本的なところに、勝因はあるのです。
 
それは「諦めなかった」こと。
例えば、ウサイン・ボルト選手に競争を申し込まれて、
真面目に勝負を受ける人がいるでしょうか?
明らかに「ウサギ」と「カメ」くらい能力に差がある人が相手の場合、
普通は、勝負する前から諦めます。
 
また、実際に勝負をしたとしても、
「ウサギ」があっという間に遠くまで行ってしまうのを見たら、
やはり戦意喪失するのが普通でしょうね。
普通は、「ウサギ」が途中で居眠りをするなんて想定しませんし。
 
しかし「カメ」は、「ウサギ」がどんどん先に行っても諦めなかった。
彼のモチベーションには、驚嘆すべきものがあります。
 
それにしても、彼のモチベーションは、何故落ちなかったのでしょうか?
彼の心情を想像してみましょう。
決して、「カメ」が鈍感だったから、くじけなかったのではないと思うのです。
多分「カメ」は、
勝負の相手を「ウサギ」ではなく、自分自身にしたのではないかと考えます。
逆に、「ウサギ」は「カメ」だけを競争相手とした。
 
恐らく、勝因はこれです。
これ以外の勝因を、この話から読み取ることはできないと思います。
 
「諦めない」とは、自分自身に負けないということです。
もっと言うと、「自分にはできない」という思いを打ち消すこと。
他者と比べるから「自分にはできない」と思うのです。
「何十年あるいは一生かかっても、やっていこう」という想いがあれば、
大抵のことは達成できると思いませんか?
だから「諦めない」とは、「期限」にもこだわらないことです。
「期限」とは、人から言われた仕事に発生します。
自分へのタスクに「期限」なんて存在しないのです。
 
そして、こういう姿勢で「夢」というゴールを追う人に、
この「ウサギとカメ」という寓話のような「奇跡」が起こるのだと思います。
「ウサギになんか勝てっこない」という気持ちを持っているようでは、
「ウサギ」の思うつぼです。
そんな相対的な価値観を持っている「カメ」は、居眠りする「ウサギ」にも負けます。
本当の敵は「ウサギ」ではなく、
自分と他者を比較しようとする自分自身の「相対的」な価値観なのです。
 
最後に、人生のゴールで笑顔を浮かべるのは、
「ウサギ」のように、
授かった「才能」に頼って、他者を「相対的」に評価している人ではありません。
「カメ」のように、「絶対的」な価値観で諦めずにゴールに向けて道を歩む人なのです。
 
ちなみにイチロー選手は、「ウサギ」だと思いますか?それとも「カメ」でしょうか?
私は、「カメ」だと思います。
何故なら、他選手と比べて非常に優れた相対的な「高み」を手に入れても、
彼の歩みは、まだまだ止まっていないからです。
多分、彼の競争相手は「自分自身」なのではないでしょうか。
 
「ウサギとカメ」には、人生を生きる上で重要な教訓が語られています。
表向きは、自分を「ウサギ」と思っている人向けの「油断大敵」という教訓です。
しかし、むしろ「カメ」の視線になれる人にこそ、
「得難い教訓」が隠されていると思うのです。
 
「カメ」の人々よ。
他者と自身を比較して落ち込む必要は、全くありません。
「夢」というゴールを見据えて、一生かけて、たゆまず前進していきましょう。
それだけで十分に、「幸せ」を手に入れることが可能です。

 
Support Wikipedia