「幸せ」損益分岐点

損益分岐点」という会社経営の考え方をご存じですか?
 
例えば、仕入値100円の消しゴムを150円で売っているお店があるとします。
そのお店の家賃は、1ヶ月1,000円です。
この場合、このお店が赤字にならないためには、
消しゴムを毎月20個売る必要があります。
消しゴムを20個売るということは、その月の「売上高」は150円×20個で3,000円。
また、「仕入高」は100円×20個で2,000円となります。
結果として、「売上高」から「仕入高」を引いた「粗利益」が、
3,000円−2,000円で1,000円となり、
なんとか1ヶ月の「必要経費」である家賃1,000円を賄える訳です。
 
ですから、このお店では毎月最低でも消しゴム20個を販売して、
3,000円の売上を立てないといけません。
このように、これ以上悪化してしまうと「赤字」に転落してしまう最低ラインの売上高を、
損益分岐点」と言うのです。
ですので、会社は自社の「損益分岐点」を一つの目標値として頭に入れて、
日々一生懸命経営をしています。
なぜなら、経営の結果が「赤字」なのか「黒字」なのかということは、
会社の存在意義のかかった非常に重要なことだからです。
 
そして、「損益分岐点」を利用している会社は、
経営努力で「損益分岐点」の引き下げを模索します。
つまり、「赤字」になってしまう最低ラインの達成すべき「売上高」が下がれば、
会社の経営のハードルが下がり、「黒字」になりやすい体質になる訳です。
損益分岐点」を引き下げる方法は、以下の2種類となります。
(1)「必要経費」を削減する。
  上記のお店の場合は、家賃1,000円を値下げしてもらえれば「損益分岐点」は下がります。
(2)商品1個当たりの「粗利益(売上高−仕入高)」を上げる。
  上記のお店の場合は、仕入れる消しゴムの種類を変えて、
  1個200円の消しゴムを300円で売るようにすれば、
  黒字になるために必要な売上高の「損益分岐点」が下がります。
 
 
さて、この「損益分岐点」の考え方を、「人」の「幸せ」でも使えないでしょうか?
 
私は常々これを模索していたのですが、
ようやくうまい考え方を思いつきましたので、ここに記したいと思います。
 
会社の「営み」とは、日々商品を仕入れて、それを販売して、
必要経費以上の「粗利益」を確保することです。
このような「営み」により、会社は「黒字」になり「利益」を得ることができます。
 
対して、「人」の日々の「営み」では、このようなことが行われていると考える次第です。
「人」は日々、「愛」という「仕入」を行って、「信」という「売上」を確保しています。
例えば、親子の関係。
親は、子どもに「愛」を与え、子どもから「信」を得て、「幸せ」を感じます。
それから、仕事も同様に考えられます。
お客様や職場の仲間に「愛」を与え、「信」を得て、「幸せ」を感じるのです。
 
ここで、「愛」は自ら行うものなので、与える量は自ら調整できるのに対し、
「信」は相手から頂くものなので、
どんな量を受け取れるか予測できないという特徴があります。
まさに、自ら決定できる「仕入」量と自ら決定できない「売上」量の関係です。
 
「愛」と「信」の関係は、私の中のイメージではこんな感じです。
1匹の蝶が、一生懸命羽ばたいています。
この自ら行う「羽ばたき」が「愛」です。
そして、この「羽ばたき」によって「浮力」を得ます。
この「浮力」が「信」です。
 
ひどい風が吹いているときには、一生懸命羽ばたいてもうまく飛べません。
一方、上昇気流が吹いているときには、少しの羽ばたきでも空高く飛べることもあります。
 
会社が「利益」を上げるときに、「仕入」よりも「売上」が大事であるのと同様に、
「人」が「幸せ」になるためには、
残念ながら一生懸命の「愛」よりも、結果の読めない「信」の方が重要です。
それでも、一生懸命羽ばたけなければ、飛べないことも事実であります。
 
さて、「人」はこのように「愛」を行うことによって羽ばたき、
「信」を得ることによって浮上して空を飛びます。
そして、この蝶には越えなければならないハードルがあります。
それが、上の例で言うところの家賃という「必要経費」です。
 
この「必要経費」は、存在するためのコストとも言えます。
例えば、お店が存在するためには「家賃」が必要という訳です。
そして、「人」が存在するためには、
それぞれの「立場」に応じた周りからの「期待値」を満たさなければなりません。
 
つまり、蝶は一生懸命羽ばたいて、
自分に課せられた「運命」に見合う「高さ」を越えて飛ばねばならない。
そして、この必要な「高さ」を越える飛翔ができない時に、「人」は不幸になるのです。
 
親は、子どもへの「愛」をもって一生懸命羽ばたき、
子どもの期待値を超えた「高さ」を達成することで「幸せ」を覚えます。
仕事も「愛」です。
仕事でお客様に「愛」を行うことによって、「信」を得て、ビジネスマンは飛翔します。
そして、社会人として、その会社の一員として、期待される「高さ」を飛び越えて、
初めて「幸せ」な仕事が可能となる訳です。
 
しかしご存じの通り、現代の社会人には「うつ」で悩む人が多い。
これは、うまく「期待値」を越えた飛翔ができていないのです。
 
これを解決するためには、二種類の方法があります。
(1)現在の「損益分岐点」は高いままに放置して、ひたすら一生懸命羽ばたく
 これも重要な解決方法の一つです。
 「幸せ」の源泉は「信」であり、
 そのためには「愛」を行うことが必要であることを理解すれば、
 状況を改善できる可能性があります。
 仕事でしっかりと「愛」を実行していますか?
(2)「損益分岐点」を引き下げる。
 どんなに一生懸命「愛」を行っても、
 現在の人間環境が荒れていて「信」をまともに受けられないこともあります。
 台風の中を蝶が飛ぶ事は、不可能なのです。
 また、自身の現在の飛翔能力では、
 現在の環境からの「期待値」を越えられないこともあります。
 この場合は、飛ぶ場所を変える以外に、
 か弱い蝶が生き残る術はないかもしれません。
 
以上、「損益分岐点」の考え方で、「人」の「幸せ」を考察してみた次第です。
このように、一つのモデルに落とし込んで理論的に考えると、
ああだこうだ悩み続けて苦しむことから脱却でき、次の行動が明確となります。
 
この「幸せ」の構造のシンプル化により、あなたに見えてきたものはあったでしょうか?