セミのさえずり

最初、私は鳥のさえずりだと思っていました。
 
「ジジジジジジジ、フィーヨフィーヨ」
 
3年前に引っ越してきた今の町で、
この時期、こんな鳴き声をあっちこっちで聴きます。
 
一体どんな鳥が鳴いているんだろう?
ずっと、気になっていました。
 
昨日町を歩いていると、
すごい近い位置でこの鳴き声が聴こえてきたのです。
 
今度こそ、正体を確かめてやろうと、聴こえてくるあたりをじっと凝視します。
 
すると、そこに予想外のものが。
小さな小さなセミが、目の前の木にとまっていたのです。
 
「え!このセミが鳴いているのか?」

 
私が知っているミンミンゼミやアブラゼミの半分以下の大きさです。
 
メロディカルで複雑なパターンを持つ鳴き声の主が、
セミだったとはとてもびっくりしました。
 
私にとっては、その日一番の衝撃的な出来事でした。
 
一体、何ていう名前のセミなんだろう?
さっそく、スマホで検索を始めます。
 
姿から種類を特定するのは難しいので、
鳴き方から同定しようと各種セミの鳴き方が記録されているページを訪れました。
 
そうすると、「あ、この鳴き方だ!」という音声にすぐに出会えたのです。
子どもの科学というところが提供しているこのページでは、
様々なセミの鳴き方を聴くことができます。
 
このセミとも思えないメロディカルな鳴き方の主は、ツクツクホウシでした。

 
ご存じの方も多いと思いますが、
まだツクツクホウシの鳴き方を実際に聴いたことがない人は、
是非聴いて見て下さい。
 
この鳴き声がセミの声だと思いますか?
事前知識がなければ、絶対多くの人が鳥の声だと判断するのではないでしょうか。
 
私は、ツクツクホウシというセミの存在を知識として知っていましたが、
実際にこんな鳴き方をするんだということを始めて知りました。
 
人生長く生きてきましたが、ここに来て、また新たな発見です。
自分の知らないことを知ると、本当に嬉しい気持ちになります。
 
そして、「もっともっと」と知識が欲しくなるなるのです。
定番のウィキペディアを読みました。
 
面白かったのが、八丈島にはツクツクホウシしかセミがいないということ。
八丈島を夏に訪れると、ツクツクホウシが島中で合唱しているそうです。
 
成虫になってわずかの期間しか生きられないセミが、
海を越えて島に自力で辿りつくとは思えません。
おそらく、本土から木を植樹したときとかに、一緒についてきたんですかね?
 
それから、ここのサイトはツクツクホウシの鳴き声の解説がわかりやすく書かれていて、
読んでいてとても楽しめました。
知的欲求を満たすオススメのサイトですので、よかったら読んでみて下さい。
ツクツクホウシのことを、もっと身近に感じることができるようになると思います。
ツクツクホウシの鳴き方は、とっても素敵です。
 
さて今回、鳴き方を頼りにセミの特定を行いました。
こんなことができるこの時代は、スゴイ時代だなと本当に思うのです。
 
携帯できるスマホから、セミの声を聴ける時代。
スマホがない時代なら、
その場で鳴き声からセミの種類を特定することなんてできません。
 
「あのセミは何なんだろう」という消化不良なモヤモヤ感を抱えて、その場を後にし、
そしていつかその疑問が頭から失われてしまうのです。
 
「ああ、そんなことにならなくて本当によかった」と思います。
 
ところで私は、
鳴き声を初見で聴いて、
あれを「ツクツクオーシ」と聴き取ることなんてできなかった次第です。
 
昔は言葉で鳴き声を伝えなければいけないので、
そういう表現にならざるを得ないのでしょうが、
今はYoutube等の動画があります。
 
「百聞は一見にしかず」という諺がありますが、
現代は「百聞は一動画にしかず」ですね。
「ツクツクオーシ」という言葉では、
あの鳴き声の1%も伝えることができません。
 
現代の情報革命の流れの中、
「動画」という新しい存在が、
人間同士の伝達手段を一段階飛躍させたようです。