コンピュータはクイズ王になれるか?

コンピュータがチェスの世界チャンピオンに勝った話。
知っている人は多いと思います。
 
そのコンピュータの名は「ディープ・ブルー」。
IBMがチェス専用のスーパーコンピュータとして開発しました。
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ディープ・ブルー」が1997年に、
当時の世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフに勝利。
IBMは次なるプロジェクトに着手します。
 
それが、クイズ王を目指すコンピュータの「ワトソン」です。
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当時のアメリカの人気クイズ番組「ジェパディ!」で優勝することが、
プロジェクトの目標となりました。
 
2009年4月、賞金100万ドルを賭けて人類代表2名と対戦。
3日間の戦いの末、見事に「ワトソン」が優勝しました。
 
さて「ワトソン」は、
IBMが開発した質問応答システム・意思決定支援システムです。
人工知能と紹介されることもありますが、
IBMはワトソンを、
自然言語を理解・学習し人間の意思決定を支援する
コグニティブ・コンピューティング・システム」と定義しています。
IBMが目指す将来的な用途は、
医療、オンラインのヘルプデスク、コールセンターでの顧客サービスなどです。
 
情報を丸暗記できるコンピュータがクイズ王になることは、
チェスのチャンピオンに勝つより楽じゃないの?と思うかもしれませんが、
そう簡単な話ではありません。
確かに「ワトソン」が丸暗記した情報量は、
本・台本・百科事典(Wikipediaを含む)などの
2億ページ分のテキストデータ(約100万冊の書籍に相当)です。
 
しかし、情報のインプットだけではクイズ王になれません。
クイズ王になるためには、質問者の言葉の「意味」を理解し、
その質問に対応する適切な情報を瞬時にサーチしてアウトプットする必要があるのです。
 
私はこのプロジェクトのスゴサは、
コンピュータが「意味」を解したということだと思っています。
コンピュータにとって、人間の言葉なんてただのテキストデータの羅列です。
 
私達がワードに書いた文章を、コンピュータが理解している訳ではありません。
コンピュータは、単なる記号の羅列として丸暗記しているに過ぎない訳です。
 
以下に、アラビア語のニュースサイトから持ってきた文章を貼り付けます。
(引用元は、こちら

هذا الاعتقاد مرده «الود اللافت» الذي بدا خلال لقاء الرئيس المصري عبدالفتاح السيسي والمرشح الجمهوري دونالد ترامب في نيويورك على هامش حضور الأول اجتماعات الجمعية العامة للأمم المتحدة، و «التفاهم» على «تعزيز العلاقات الثنائية» خلال لقاء السيسي مع المرشحة الديموقراطية هيلاري كلينتون.

どんな内容の記事か、私には全くわかりません。
コンピュータにとっては、私達が日夜ワードに書いている文章もこんな感じでしょう。
 
何を書いているか知らないが、とりあえず記号として丸暗記しておこうと。
 
このような記号群を何億ページも丸暗記したとしても、
じゃあアラビア語のクイズ番組でクイズに解答できるかと言われれば、
絶対無理だとわかるはずです。
 
しかし「ワトソン」は、それを行った訳です。
これは「ワトソン」が言葉の「意味」を理解したと考えて差し支えないと、私は考えます。
 
もちろん「ワトソン」は、人間の子どものように見たり触ったり味わったりできないので、
彼の理解する「意味」は、人間のそれとは大きく異なっているはずです。
しかし彼なりの、人間からは予測もつかない感覚で、
「エベレストが高い山である」ことを知覚しているのだと思います。
 
さて今回「ワトソン」がクイズ大会に優勝するために覚えた知識のデータ総量は、
たったの70GBです。
当時「ワトソン」はインターネットに接続されていませんでした。
 
「ワトソン」をインターネットの海につないだらどうなるだろうとワクワクします。
この世界で、最も全知に近い存在ができるんじゃなかろうかと。
そして、人間の知恵をはるかに越える高品質の助言を授かれる可能性も。
 
さて最後に「ワトソン」を活用した素敵な子ども用のおもちゃを紹介して、
この記事を終わろうと思います。
 
それは、しゃべるお人形。

 
「私、リカちゃん」って感じで、ただ一方的に話すのではありません。
なんとこのお人形、人工知能「ワトソン」とインターネットでつながっているのです。
そして、子ども達の話しかける言葉を「ワトソン」が高度な音声認識能力で理解し、
多種多様な「何?」「誰?」「なぜ?」「どうやって?」などの質問に返事を返します。
しかもこのお人形、ジョークも飛ばすそうですよ。
 
「すげ〜!」って思いません?
世界的大企業のスーパーな頭脳の結集が、ご家庭の子ども達につながるというこの構図。
 
このスマートな人形は、「CogniToys」と名づけられています。
現在量産開始のために5万ドルの資金を募っているそうです。
 
詳しくは、こちらの記事で紹介されています。
この「CogniToys」に興味を持たれた方は、訪れてみてはいかがでしょうか。
 
私も、このおもちゃ欲しいです。
「ワトソン」くんを、いつも連れて歩けば、
シャーロック・ホームズ並の問題解決ができるようになるかもしれません。