【幸せ総研】会社が従業員に提供できるもの

私は先日、ある会社を訪問させていただきました。
素晴らしい理念と素敵な人格をお持ちの社長で、
工場を見学させていただいた際も突然の訪問者なのに
従業員の方々は皆さん笑顔で「こんにちは」「いらっしゃいませ」と
私たちに挨拶の言葉をかけて頂きました。
 
とても素敵な会社だなぁと思いました。
従業員の方々も、とてもやりがいを持って仕事をされているようにお見受けました。
 
私は帰りの電車の中で、
「給与」や「やりがい」の他にも、会社が従業員の方々に提供できるものが、
まだあるんだなぁと思いました。
それは、「モラル・ビオトープ」とでも言うべきものです。
ビオトープとは、ある生物のための典型的な生存環境のことです。
 例えばホタルのために人工的に用意された生存環境をビオトープと言ったりします。
 詳しくは、ウキペディアをどうぞ。)
  
この会社の中では、挨拶は空気のように当たり前に存在しています。
また、会社のいろいろなところに仏教の心温まる言葉が貼り出されています。
この会社では、思いやりの心が当たり前に流通している訳です。
しかし当然ながら、日本の社会全体はこんなにモラルが高い訳ではありません。
日本の社会においては、挨拶しても無視されたりして、
段々温かな心の熱が奪われ平温に戻ってしまいがち。
 
そういった荒波の強い外海が、日本の社会だとしたら、
人々がモラル高く安心して心豊かに過ごせるビオトープが、こちらの会社なのです。
 
高いモラルを維持できるなるように創られた特別な環境「モラル・ビオトープ」。
モラルの高いことを、よしとする人々が集うユートピア
理不尽な世界から守られている希望の砦です。
 
私から言わせると、会社から提供される生存環境である「モラル・ビオトープ」は、
高い給料なんかよりも、ずっと魅力的で価値のあるものです。
仲間との温かで心地よい心の交流は、人生に大きな価値や意味を持たせます。
 
モラル・ビオトープ」を従業員に提供している会社で有名な事例に
アメリカのサウスウエスト航空があります。
 
ウィキペディアによりますと、
1973年以来、アメリカの景気の動向に関わらず黒字運営を続ける
全米で数少ない航空会社の1つであります。
この会社の特徴は、なんと言っても「社員第一、顧客第二」というポリシー。
「えっ!顧客よりも従業員が上なの?」とびっくりするかもしれませんが、
不確定要素の存在する顧客よりも、
信頼できる人間関係を構築可能な発展の原動力となる社員を上位に位置づけ、
「従業員を満足させることで、却って従業員自らが顧客に最高の満足を提供する」
という経営哲学を追求した結果なのです。
サウスウエスト航空では、
従業員の採用に際してユーモアのセンスがあることを重要視します。
そのような採用方針の結果、
この航空会社では従業員の判断によって
聖パトリックの日に客室乗務員が小妖精の衣装を着用して乗務したり、
運航中に乗客が連れていたマゼランペンギンの機内散歩を許可したりするのです(笑)
 
とにかく、面白くて優しくて素敵な会社なので、
上記のウキペディアの記事を眺めて頂くことをお奨めします。
 
ところで、経済学者のシュンペーターは、会社を起業する人の動機を3つ挙げました。
「私的帝国の建設」、「勝利者意思」、「創造の喜び」です。
 
これからの時代、上記以外の第4の動機が現れ始めていると私は考えています。
そう。「モラル・ビオトープ」です。
 
理不尽で不毛な世界に「モラル・ビオトープ」という生存環境がどんどん増えることで、
世の中の幸福度が上昇していく。
そんな幸せな社会の実現を夢見て、多くの人が起業したら素敵だなと思います。
マクロの視点から、政府が人々を幸せにすることには限界があります。
そうではなくて、ミクロの視点から起業家達が小さな幸せのビオトープ
雑草のように繁殖させて社会を埋め尽くしていく。
「政府主導」よりも「草の根」主導の方が、うまく世界を幸せにできるんじゃないかなと、
最近わりと真剣に考えています。
 
環境破壊により姿を消したホタルですが、
人の手でビオトープが創られ、近年その数を増やす努力が続けられています。
モラルにも、ビオトープを。