「量子脳理論」

今日は、「量子脳理論」のお話をしたいと思います。
「量子脳理論」とは、今まで解明されていない「クオリア問題」等の意識の問題に、
量子力学」的な性質が深く関わっているとする考え方の総称です。
詳しくは、ウィキペディアをどうぞ。
そして、今回は書籍「ペンローズの<量子脳>理論(竹内薫茂木健一郎訳・解説)」を
参考にさせていただいています。
また、多分に私の意訳や解釈が入っておりますので、ご留意ください。
 
さて、過去ブログにて、「シュレディンガーの猫」の話をさせていただきました。
シュレディンガーの猫」は、最先端の物理学である「量子力学」を説明するのに便利な概念です。
詳しくは、上記の過去ブログを見て欲しいのですが、
ここで「量子力学」のエッセンスを簡単におさらいしましょう。
 
量子力学」によれば、電子のようなミクロの物体は、
どこかに「ある」ということが決定されていないと説明されます。
どこかに「ある」と最初から決定されているのではなく、
A地点にある可能性が○%、B地点にある可能性が○%というふうに、
「ある可能性がある」という確率の集合として、雲のようにうっすら広がっている訳です。
ここら辺イメージしにくいと思うのですが、ロボットの忍者で説明したいと思います。
ロボットの忍者があなたの背後から近づいてくるという状況を想像してください。
ロボ忍者は、右から近づいてくる可能性が50%、左から近づいてくる可能性が50%。
あなたが後ろを振り返るまでは、ロボ忍者はあたかも分身の術を使ったかのように、
右にも左にも半透明な状態で両方に存在している訳です。
 
ここで、話を電子に戻します。
ロボ忍者の例えで説明したとおり、電子も様々な場所に分身しています。
しかし、それぞれがごく小さい確率なので、
半透明どころか透明に近い状態で、電子があらゆるところに分身して、
存在する可能性のある全域に、雲のような状態として存在する訳です。
(半透明とか透明って話は、あくまでイメージですよ)
 
しかし、これを人間のような「意識」のあるものが「観察」すると、
この「確率の雲」が「ヒュバ」っと「収縮」し、ある一点に「ある」状態になります。
ロボ忍者で説明すれば、あなたが後ろを振り返った瞬間に
ロボ忍者は分身することができなくなり、右か左かに場所が決定されるということです。
「意識」あるものが「観察」をすると、世界が決まると言っていいかもしれません。
 
量子力学」では、今まで科学で扱ってこなかった「意識」が登場するのが面白いところです。
 
さて、この「量子力学」を使って、今度は「意識」の話をしたいと思います。
今から説明するのが、「量子脳理論」のお話です。
上記で説明した「確率の雲」は、恐ろしく長い期間、「収縮」せずにたゆっています。
しかし、ある客観的な基準を満たすことで、この「確率の雲」は自ら「収縮」します。
そして、この「収縮」は他の「確率の雲」をどんどん巻き込んで周りも「収縮」させ、
結果として、一度「収縮」が発生すると、次々と「収縮」が連鎖する訳です。
 
では、この「収縮」のドミノ倒しの最初の発端は何なのか?
「量子脳理論」では、「脳細胞」の中の「マイクロチューブル」という組織が、
最初の「収縮」を起こすシステムであると提唱しています。
そして「意識の流れ」は、
「脳細胞」の中で「確率の雲」が「収縮」するプロセスであると説明されています。
つまり、「収縮」が起こる前の「前意識的プロセス」から、
瞬間的に「収縮」が起こり、更に「収縮」が伝播して「意識」が顕在化するのが、
「意識の流れ」なのです。
 
そして、この「脳細胞」の中で発生した「収縮」は、
人間が外界の何かを観察することで、その対象をも瞬間的に「収縮」させていきます。
 
ところで、「意識」の働きを止めるものとして、「麻酔」がありますよね。
実は、「麻酔」って経験則的に効果があるものとして使われてきましたが、
そのメカニズムは今まで解明されていませんでした。
しかし、この「量子脳理論」の考え方を活用すると、答えが見えてきます。
そう、「麻酔」により「脳細胞」や「神経細胞」の中の「マイクロチューブル」の働きが
阻害されることで、「収縮」ができなくなり、「意識」が止まったと考えられる訳です。
 
このように考えていくと、「シュレディンガーの猫」問題にも決着がつきます。
(「シュレディンガーの猫」については、過去ブログをどうぞ)
50%の確率で死ぬ装置に入れられた哀れな猫。
人間が、その装置の箱を開けて中を「観察」するまでは、
猫は生きている状態と死んでいる状態が、50%の確率ずつ重なり合って存在しているはずです。
しかし箱の中の猫に「意識」があるならば、
猫が「確率の雲」を「収縮」させているかもしれません。
人が箱を開けて中を確認するより前に、
猫自身が生きるか死ぬかのロシアンルーレットを決行して結果を出してしまっている訳です。
 
さて、ここから先は「もしかしたら、こうなんじゃないか」という私の想像の話です。
ミクロの世界の「確率の雲」の「収縮」が「意識の流れ」として表れるのであれば、
「確率の雲」があるところ、「意識」の原材料が存在することとなります。
「確率の雲」は、この空間にあまねく存在している訳ですが、
「脳細胞」や「神経細胞」の中以外でも、
「確率の雲」の「収縮」が起きている可能性はゼロでないかもしれないですよね。
そうしたら、そこらへんの石とかこの世界のあらゆるものに、
原始的な「意識」が存在してもおかしくないかもなぁと妄想したりしています。
 
そして、「シュレディンガーの猫」。
生きるか死ぬか50%の過酷な状況ですが、彼の意識が「確率の雲」を「収縮」させるのなら、
もしかしたら、彼の「意思」のあり方によって、
どちらに「収縮」するか影響を与えられるかもという妄想もできそうです。
まあ、「意思」で「確率」を操作するなんて「奇跡」みたいな話ですが。