ムハマド・ユヌス教授の「マイクロクレジット」

ムハマド・ユヌス教授をご存知でしょうか?
貧困層の経済的・社会的基盤の構築に対する貢献」を理由に、
ノーベル平和賞を受賞した方です。
 
アメリカで経済学の博士号を取得した教授は、
出身国のバングラディシュに戻り、
貧困層の救済する方法を模索します。
そして考案された手法が、「マイクロクレジット」です。
教授は、僅かな資金を高利貸しから借りて、
竹の椅子を作り生計を立てる女性ソフィアに出会います。
彼女は1日10%の利息を取る高利貸しから資金を調達して、
材料費を工面していたので、
実際に椅子を売り上げてもほとんど手元には利益が残りませんでした。
どんなに働いても、稼いだお金は高利貸しにほぼ搾取されてしまうのです。
彼女に手元に残るお金は、1日に僅か2セント(約1.5円)だったといいます。
 
彼女を貧困から救うにはどうしたらよいのか?
答えは、「Win-Lose」の高利貸しではない、
Win-Win」を目指すちゃんとした銀行から資金を借りることです。
しかし、担保も何もない貧困層の女性に融資する銀行なんて当然存在しません。
しかも融資する金額も、通常の銀行が扱わない小口の額です。
 
そこで、教授は自ら銀行を設立しました。
それがあの有名な「グラミン銀行」です。
さらっと描きましたが、この「グラミン銀行」、
実は銀行業として、とても「常識破り」なことに挑戦しています。
 
(常識その1)
貧困層の人々が、律儀にお金を返す訳がないだろう?
(常識その2)
こんな小口の資金で融資をしていたら、手間ばかりかかって経費倒れになるだろう?
 
しかし、これらの常識を覆したのが、「ノーベル平和賞」たるゆえんなのです。
 
(常識その1を覆せ!)
普通は、担保も保証人もない「信用力」ゼロの最貧困層の人々に融資なんてしません。
しかし、「マイクロクレジット」では「信用力」ではなく、
「仲間からの信頼」を測って融資を行います。
具体的には、血縁関係のない5人1組のグループに対して貸付けし、
返済を怠るとグループ全体が連帯責任を負う制度を導入しました。
また、私はこの点に注目しているのですが、
貸出先は、2003年時点で97%女性です。
これは、バングラディシュはイスラム教国家であり、
女性は男性よりも立場が非常に弱かったことが背景にあります。
奥さんが旦那さんに殴られるなんて、当たり前の世界です。
このような社会において、男性に融資をしたらどうなるでしょう?
飲んだくれて終わりになるのが目に見えています。
旦那はイスラム社会に守られて大きい顔をしていますが、
彼らの甲斐性では最貧困層にあえぐしかなかった訳です。
ならば、選手交代。
今まで全く「チャンス」を与えられてこなかった女性に、
グラミン銀行」は「チャンス」を与えたのです。
結果として、彼女達は与えられた「チャンス」に応えました。
なんと95%以上の返済率が達成されたのです。
そして、女性が家庭に収入をもたらすことにより、女性の地位も向上しました。
(常識その2を覆せ!)
大企業に100億200億貸すだけなら、手間的には簡単です。
しかし、100円200円を多くの人々に貸し出す手間は相当なものになりそうです。
この点には、まず通常の融資よりも高い金利を設定することで対応しています。
また、融資が決まったら、グラミン銀行の考え方や規則、手順について、
1週間から2週間の研修を受けてもらい、返済をスムーズに行えるようしています。
また、識字率の低い人々でもありますので、法的な契約書は一切結びません。
全ては口頭で行われ、固い信頼関係を融資先と結べるからこそ、
一般の銀行が融資に当たって必要な手間なんかよりも少ない手間で済むのです。
 
いかがでしょうか?
マイクロクレジット」は地球上の貧困という苦しみを緩和する
画期的なシステムだと思いませんか?
 
マイクロクレジット」について、もっと詳しく知りたい方は、
カフェグローブの説明記事大和証券マイクロファイナンス特集をご覧下さい。
ムハマド・ユヌス自伝」(早川書房)もオススメです。
 
さて、私がこのムハマド・ユヌス教授の「マイクロクレジット」を知って、
大きく感じたことがあります。
それは、不当に社会的弱者になってしまっている人々に
「チャンス」を提供することの意義と効果です。
彼らの眠れる才能が開花できないことの不幸、社会的損失。
世界中の全ての才能(強み)にチャンス(機会)を与えることが、
世界の幸福度向上の最大の特効薬だと思うのです。
 
例えば、日本においては「引きこもり」や「ニート」の方々が苦しんでいます。
彼らに、ネットショップ手法のレクチャーと若干の融資を行ったら、
もしかしたら才能を発揮して、自営できるようになる人が少なからず現れるかもしれない。
将来、そんなNPO法人を立ち上げるのもいいなと思っています。
どなたか一緒にやりませんか?
私は、苦しんでいる人々を見過ごすことができない性分です。