アンチ「ゲートキーパー宣言」

日本の自殺者数は、1998年から14年連続で毎年3万人を超えており、
2009年度のWHOの調査によれば、
10万人あたりの自殺者数の世界ランキングでは、
日本は世界5位に入っています。
日本より上位の国は、以下のとおりです。
 1位:リトアニア
 2位:韓国
 3位:カザフスタン
 4位:ベラルーシ
 
結局、先進国の中では自殺率トップとなっています。
(詳しくは、ウィキペディアをご覧下さい)
 
また、日本の20代30代の死因のトップは、交通事故でも病気でもなく「自殺」です。
 
こんな社会情勢の中、国は3月を自殺対策強化月間としました。
キャッチフレーズは「あなたもゲートキーパー宣言!」。
アイドルの「AKB48」を起用して、あちこちにポスターや中吊りが掲載されています。
 
実は、今回の国の自殺対策キャンペーンには、様々な「ものいい」が出ています。
最初、キャンペーンのコピーは「あなたもGKB47宣言!」でした。
「AKB48」をもじった言葉です。
このキャッチコピーは、何を伝えようとしているのかわかりますか?
「GKB」とは、「ゲートキーパー・ベーシック」の略。
ゲートキーパー」とは
「自殺のサインに気付き、話を聞いて専門相談機関につなぐ役割が期待される人」
のことらしいです。
「ベーシック」には、
「専門家以外の一般の方が参加すること」を期待する意味が込められているとのこと。
そして、「47」には47都道府県全域に広がりますように・・・という意味を
込めているそうです。
 
皆さんも気づかれたと思いますが、
結局「GKB47」というコピーは、
広告出演者の「AKB48」に無理矢理合わせて、作られたものです。
読んで欲しい人に伝えたい「メッセージ」や「想い」は、見えません。
 
そして、「GKB47」という言葉は、
国会や関連団体から自殺対策に使う言葉として不謹慎であるとの指摘を受け、
撤回されることになった訳です。
しかし、既にポスター25万枚は印刷済。
結局ポスターは廃棄され、、印刷代300万円の税金が無駄になりました。
 
結局、72の民間団体から、「人の生死と向き合うフレーズとして不適切」として
撤回を求める抗議声明が発表されたそうです。
(詳しくは、産経新聞記事をどうぞ)
自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンク清水康之代表は、産経新聞の取材に、
「キャッチフレーズがそのままだったら、
 遺族や自殺を考えている人たちは、命が軽んじられていると思ったり、
 政府の無理解を感じたりして、悪い影響を与えると懸念していた」と述べています。

そして、新たにどんなポスターが出来上がったのかと思えば、
「あなたもゲートキーパー宣言!」です。
意味の全く解らない「ベーシック」や「47」が除外されただけでもましなのでしょうが、
やっぱり何を伝えたいのかよくわからない。
 
このブログを描くために調べるまでは、
私は「ゲートキーパー」とは国が用意した専門相談窓口なのだと、誤解していました。
上にも書いていますが、そうではなくて、
「自殺のサインに気付き、話を聞いて専門相談機関につなぐ役割が期待される人」
ということだそうです。
 
ですから、この一連のキャッチコピーの意味を翻訳すると、
「あなたの周りの人が出す自殺のサインに気づいてください。
 そして、気づいたら専門相談機関につないでください。」
ということのようです。
 
なぜ「ゲートキーパー」などという馴染みのないカタカナ言葉を使ったのでしょうか?
「AKB48」を推す広告代理店の提案を、
何も考えずにそのまま採用したように見えます。
国会でキャッチコピーの不謹慎さを指摘され、
野田首相も「私も違和感を抱いた」と答弁したそうです。
「違和感」を抱いたのなら、
是非もっと効果的な代替コピー作るよう指示して欲しかったものですが・・・。
いずれにしても、真剣に「自殺を何とかしたい」と考えている人なら誰でも、
この一連のキャッチコピーには「違和感」を覚えると思います。
ゲートキーパー」という名称は、
先に「AKB48」ありきの言葉だったのではないかと、勘ぐられても仕方ないでしょう。
 
また、出演者も「AKB48」でいいのでしょうか?
電車の中吊り広告を見たら、
たくさんの綺麗なメンバーがさわやかに呼びかけています。
 「大丈夫?」「眠れてる?」「ゆっくり話そう」
そして、隅の方に小さく「3月は自作対策強化月間です」とう文字。
 
自殺というテーマならば、
自殺を考えている人と「苦しみ」を共有できそうな人の方が、
「自殺」という問題を語るには適しているのではないでしょうか?
人生の中で大きな「苦しみ」を乗り越えて「力強く生きて」いる人だからこそ
発信できるメッセージがあるのではないでしょうか?
 
例えば、急性骨髄性白血病を乗り越え世界的な俳優として活躍されている渡辺謙さん。
もしくは、交通事故で瀕死の重傷を負ったビートたけしさん。
亡くなられましたが、いかりや長介さんにも人を包み込む「優しい」オーラを感じました。
 
無駄になったポスター印刷代300万円の他に、
「AKB48」の出演料など、どの程度のお金(税金)が動いたのか知りませんが、
このキャンペーンに関与された国や広告代理店が、
「自殺者の抱える苦しみを真剣に理解しようとしていないな」という印象を
私は受けてしまうのです。
 
今回のキャンペーンで国民に発信された真のメッセージは、
ゲートキーパーというものの訴求」ではないと思います。
そうではなく、今回の件から読み取るべきは、
「国ですら自殺を考える人々の苦しみを理解する気はない」ということです。
 
自殺を考えるほど悩んでいる人は、
相手を選ばずに誰にでも相談して依存しようとすると、きっともっと傷つきます。
苦しいですが、このような局面でも「与える人」との「出会い」を待つしかないのです。
また、人を観る目もこの機会に養わないといけません。
オセロの中島さんの例のように、
こういう心の弱い時は、それをエサにする人が寄ってくるのです。
私も「いじめ」で自殺を考えていた時に、
新興宗教の勧誘にひっかかってしまったことがあります。
 
「苦しい」のは百も承知ですが、
「苦しい」時ほど「自立」するチャンスだと捉え、
「依存」を克服していきましょう。
そして、現在の自分が囚われている「価値観」を一度破壊しましょう。
その「苦しみ」の本当の「原因」は何ですか?
自分の「心」が何かにこだわっているから、「苦しみ」が生じるのではないですか?
 
私は、過去に職場の「いじめ」に合いました。
その際、最も苦しかったことは、
今まで仲良くおつき合いさせて頂いていた(と思っていた)職場の仲間達が、
「いじめ」の首謀者が私以外の人に告知した飲み会に、
私に内緒で参加していることでした。
そういった飲み会が週に一度以上ありました。
もともと人付き合いも苦手でコンプレックスもありましたので、
私は、本当に自殺を考えたのです。
会社を辞めてからもしばらく、
「いじめ」の首謀者を呪わんばかりの「憎しみ」の気持ちが続きました。
毎日毎日、「いじめ」の首謀者の顔が、頭に浮かびます。
その度に、「憎しみ」と「苦しみ」が「心」を覆うのです。
  
今から考えると、「何でこんなくだらないことに、あんなに苦しんだんだ」と思います。
結局、当時の地獄のような「苦しみ」の原因は、自分の「心」の「依存心」でした。
会社を辞めてからも、克服するまでに2〜3年かかりましたが、
私は、他者への「依存心」を克服することで、「いじめ」の苦しみを乗り越えたのです。
 
また、他者には「奪う人」と「与える人」がいることを、この時理解しました。
そして、自分は「与える人」になろうと「心」に決めたのです。
 
上記の経験から、私は提言します。
「苦しみ」の原因は、自分の「心」の中にあるのです。
他者や外部要因を、所詮自分の力で変えることはできません。
「苦しみ」を倒す剣は「心」の中に。
 
私が生きる上で使わせて頂いている理論に、
ヴィクトール・フランクル博士の「フランクル心理学」があります。
フランクル心理学については、過去ブログをどうぞ)
彼は、悪名高い強制収容施設「ホロコースト」に、
ユダヤ人として収容された体験をお持ちです。
その「ホロコースト」において、
収容された人々を心理学者として観察した内容をまとまた書籍が
「夜と霧(みすず書房)」です。
人類史上最高ランクの「苦しみ」の場である「ホロコースト」。
収容所の多くの人は絶望に打ちひしがれ、
ある者は自殺し、ある者は理性を捨て動物のようになってしまいます。
しかし、そのような地獄のような「苦しみ」にあっても、
明日殺されるかもしれないのに、力強く生きる人々の姿があったそうです。
 
ヴィクトール・フランクル博士は、
その「力強さ」の源泉を「心のあり方」にあると考えました。
フランクル心理学でいう「態度価値」です。(詳しくは、過去ブログで)
 
ここで、私が言いたかったのは、
ホロコースト」のような最悪の「苦しみ」に対しても
「心の持ち方」で勝つことができるということです。
 
自殺を考えるほど「苦しみ」に覆われているのに、
心から信頼して相談できる相手がいない人は、
原因を外に求めたり、苦しみから逃れるために外に依存しようとすることは控えましょう。
今こそ、「心」の成長のチャンスです。
自分の「心」の何が「苦しみ」をもたらしているのか、真剣に考えてみて下さい。
今回紹介した書籍「夜と霧 新版」や「フランクル心理学の考え方」も、
あなたの助けになるかもしれません。
 
最終的に「自分」を助けられるのは「自分」だけ。
「自分」をもっと信頼して!
「自分」をもっと頼って!