ワタミグループ渡邉美樹会長に関する「考察」

前回のブログで、
今ネットで話題の人であるワタミグループの会長である渡邉美樹さんについて触れました。
 
どうネットで話題かというと、
渡邉美樹さんが今度の参議院選挙で自民党の公認を得たということが
問題視されているのです。
ネットでは、ずばり渡邉美樹さんが政治家として相応しい人物かどうかという点で、
議論がなされています。
その議論の多くは否定的な意見です。
 
それは主に、
一代で大会社を築いた渡邉美樹さんの「働く」ことに対する独特の「哲学」への
反発から来ているものと思われます。
特に、実際に起きた和民の女性社員の過労死事件への会社側の対応が、
ネットでは「心」ない行動だと思われているということが大きな要因です。
(渡邉美樹さんのことや過労死事件について詳しくは、ウィキペディアをご覧下さい)
 
実は、私もネットで渡邉美樹さんの情報に触れたときには、
否定的な感情を抱きました。
そして、この人を政治家にしてはいけないと考えていたのです。
 
しかし、情報の一面だけ拾うのもどうかと思い、
渡邉美樹さんの著書「きみはなぜ働くか? 渡邉美樹が贈る88の言葉」を購読しました。
そして、じっくり「考察」してみたのです。
 
結論から言うと、この件に関しては、
ネットの情報だけで判断してはいけないなと思いました。
この件に関して、ネットで得た第一印象とは異なる感想を持つに至ったのです。
もし、これを読んでいるあなたが、
渡邉美樹さんの参議院選挙出馬に興味を持っていて、
かつ「公平」を大切にされる方であるなら、
上記の渡邉美樹さんの書籍を読むことをオススメします。
正直、渡邉美樹さんの「哲学」に共感する部分も多いのではないかと予測する次第です。
そして、いかにネットの情報が一面的であるかがよくわかると思います。
情報というものは両面から確認しないと、本当に危険なのです。
 
例えば、ネットでは渡邉美樹さんの言葉として、
「365日、24時間、死ぬまで働け!」という言葉が紹介されているのですが、
実はこの言葉について上記書籍では、
「別に、言葉のとおりそうしろと言うのではない。
 そんな気持ちで、働いて欲しいということだ。」
と述べられています。
つまり、「365日、24時間、死ぬまで働け!」という言葉は、
額面通りに解釈したら、それは誤りということになる訳です。
 
私自身、渡邉美樹さんの考え方に「共感」した部分は多くありました。
例えば、「人」の価値とは「心」であるとし、
「人生」の意味とは「人間性を磨く」ことであるとしている部分です。
そして、渡邉美樹さんは
私と同様に人の「本質」は「善」であるという「性善説」をおっしゃっています。
「モノ」に囚われずに「心」に重点を置かれる点には、私も深く「共感」するところです。
実際にこの書籍には、多くのラインマーカーを引きました。
政治家も経営者も「モノ」で動く人が多い世の中で、
渡邉美樹さんは間違いなく社会にとって貴重な人です。
 
一方、ネット上で渡邉美樹さんへの摩擦が起きている原因も
何となくわかったような気がします。
それは、「仕事」を「人生」の聖なる修行の場と捉えていることです。
渡邉美樹さんは「お客様は神様です」「お客様にNOと言わない」ということを
著書にて提唱しています。
どんな過酷なことでも成し遂げれば、
その過程から「人生」の目的である「人間性」向上を得ることができるとしているのです。
 
また、こうも言っています。
人は「鋭」でなく「鈍」になれ。
細かなことをいちいち考えるような「鋭い」状態でいるよりも、
とにかくお客様のことだけを第一に思ってればそれでいいという
「鈍さ」を持って欲しいと言っています。
 
すなわち、あまり細かいことは考えずに、
「仕事」で「他者」に尽くして「人間性」を磨いていれば、
「人」は「幸せ」になれるんだと言っている訳です。
そういう考え方だからこそ、
社員に対してお客様のために365日24時間働くつもりで仕事をしろと言えるのだと思います。
 
でも、実際どうなんでしょうね?
「幸せ」って、「これが正解です」って与えられても、
それはその人にとって「真」の「幸せ」になり得るのでしょうか?
 
「試行錯誤」して「痛い目」にあって、
悩んだ末に出てきた「答え」じゃないと、
その人にとっての「正解」にはならないんじゃないかなと思います。
例え、たどり着く「答え」が、結局は同じものであったとしても。
 
また、「幸せ」の「正解」は、他にもたくさんある可能性だってある訳です。
例えば、ホロコーストでの体験を綴った有名な書籍「夜と霧」の著者である
心理学者ヴィクトール・フランクルは、「幸せ」は次の3つのから構成されるとしています。
(1)創造価値(2)体験価値(3)態度価値
(詳しくは、過去ブログ「幸せの見つけ方(その3)」をご覧下さい。)
 
このように「幸せ」とは、深く多様なものであるため、
渡邉美樹さんの到達した「正解」が、
他の人にとってもそのまま「正解」となるかどうかは、正直わかりません。
 
その人にとって本当に「正解」であるのなら、
どんな荒療治でも「騙されたつもり」で体験してみればよいと思います。
渡邉美樹さんの言うように
「お客様は神様です」というつもりで「滅私奉公」すればよいでしょう。
「幸せ」になれると保証されているのなら、
残業バリバリでプライベートの時間も犠牲にすればよいでしょう。
 
しかし、結局それが万人に有効な「処方箋」ではなかったから、
「副作用」が強すぎて、上記の過労死事件も起きてしまったのだと想像します。
これこそが「幸せ」の万能薬だ!という渡邉美樹さんの思い込みが強烈すぎて、
世間一般の警戒心を喚起する要因となっているように感じるのです。
 
ネットの意見で、こんな意見がありました。
「社員の事を考えない会社が、顧客のことを本当の意味で考えられるはずがない」
サービス業においては、
顧客満足度(CS)を上げるためには、
従業員満足度(ES)を上げる必要があるとも言われています。
「お客様は神様です」という精神の下、
プライベートの時間も削って「労働」に自身の人生を捧げることが、
本当に全ての社員にとっての「幸せ」につながるのでしょうか?
お客様一人ひとりの顔をしっかりと見るのと同様に、
従業員一人ひとりの顔もしっかりと見ることができているのか?
はたして一つの「処方箋」だけで、全ての従業員が「幸せ」になることができるのか?
 
渡邉美樹さんが掲げる「幸福論」に、社会の多くの人が納得しない限りは、
独善的であるとの批判はまぬがれないのかもしれません。
しかし政治家を目指す以上、理解されないと嘆いても仕方ない訳で、
社会と対話をしっかりと行い、
国民に独自の「幸福論」をうまく納得してもらわなければならないでしょう。
 
どうせなら、比例名簿というところにアクラを組まずに、
渡邉美樹さんには一政治家候補として、国民とガチで対話して欲しいと思います。
そうして、国民の中で「働く」ことや「幸せ」に対する議論が沸き起これば、
それは日本にとって大きな収穫になると思うのです。
 
今や渡邉美樹さんは、善くも悪くも日本で最も注目されている参議院選挙の候補者です。
この機会に是非、ご自身の「哲学」を大いに国民に訴えて頂ければと思います。