外来種の「雑草」から経営のヒントを見出す
私は「雑草」が好きです。
自身の「強み」を活かした逞しいその「生命力」に、「美しさ」を感じます。
そもそも私達が、最も目にする身近な「生命」とは何でしょう?
散歩中の犬でしょうか?
ハエやゴキブリでしょうか?
スズメでしょうか?カラスでしょうか?
答えは「雑草」だと、私は思います。
「雑草」は、私達の最も身近な隣人なのです。
もちろん、「雑草」という名前の草はありません。
それぞれの草にちゃんと「名前」があり、
それぞれの「強み」を活かして「一生懸命」生きているのです。
最近は忙しくてなかなかできませんが、
私は、これらの「雑草」の「名前」を特定し、
彼らの「生き様」や「強み」を調べることを趣味にしています。
「雑草」と言って、侮ることなかれ!
前々回のブログ記事で紹介した「遺伝的アルゴリズム」の話ではないですが、
この世界の長い長い「自然淘汰シミュレーション」を乗り越えてきた「最適解」の一つです。
彼らに学ぶことは、確実にあります!
私は、いつか「雑草に学ぶ経営学」というジャンルを開拓したいと想う次第です。
限られた資源を活用して、競合よりも繁栄する彼らの卓越した戦略・戦術。
最近は、「○○に学ぶ経営学」という本がもて囃されていますが、
実在の雑草を切り口に経営手法を見出すという本は、
新鮮かつ風変わりな視点で売れそうな気もします。
そもそも、経営学でよく使う「ドメイン(生存領域)」という言葉は、
生物学から借用した概念なのですよ。
「会社」も「生命」も、
限られた資源を活用していかに繁栄をするか?という「ゲーム」を日々繰り広げています。
路面店の繁栄方法なんて、まさに「雑草」そのものです。
セイヨウタンポポを想像してみて下さい。
路面に「店?」を開き、どんどんその数を増やしています。
(セイヨウタンポポのウィキペディアは、こちら)
彼らは1905年に、北アメリカから北海道の札幌市に持ち込まれました。
そして、全国にあっと言う間に広がってしまったのです。
彼らは、「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されています。
(「日本の侵略的外来種ワースト100」のウィキペディアは、こちら。
このページは写真付で読み応えがあり、とても面白いです。
お子さんの夏休みの自由研究のネタとして、いかがですか?)
セイヨウタンポポは、日本にとって「外来種」です。
「外来種」と言うと、何か「秩序」を乱すものとして嫌悪感を覚えます。
しかし「在来種」だらけのアウェーに飛び込んで、一気にその数を増やしたことには、
そこに卓越した「強み」や「知恵」があることも見落としてはいけないと想うのです。
さて、セイヨウタンポポが日本で成功した要素は何だったのかと言いますと、
ウィキペディアでは、以下の3つが挙げられています。
(1)葉や茎を切ると分泌される白いゴム質の乳液が、虫の食害を防ぐ。
(2)セイヨウタンポポには有性生殖を行う2倍体と無融合生殖を行う3倍体があり、
日本に定着したセイヨウタンポポは3倍体で、単為生殖で種子をつける。
(3)在来タンポポと住み分けている。また、在来タンポポとの交雑を進めている。
二次林では在来タンポポの割合が多く、
造成地や市街地では外来種と在来種の雑種タンポポがほとんどを占める。
上記3点について、それぞれ経営に絡めて検討してみます。
(1)は、外敵から自組織を守る仕組造りが必要だということ。
「外敵なんていない」なんてお花畑ではいけません。
自分達が資源を奪い合うゲームに参加していることを忘れてはいけないのです。
会社にとっての資源は、何だと思いますか?
「カネ・ヒト・モノ・情報」と言ったところでしょうか?
それぞれを奪う要素やシチュエーションを想定し、
優先度をつけて防衛策を講じる必要があると思います。
例えば、「カネ」に焦点を当てると、
仕入れ先や外注先業者が、
ちゃんと対価に見合って機能しているかどうか検証が必要です。
機能していない支出先は、組織から資源を吸い取る外敵に過ぎません。
「機能していない社員も!」という声が出そうですが、
社員は自組織の細胞であるため、
軽々にこれを攻撃するのは「自己免疫疾患」だと考える次第です。
自組織の細胞は、排除でなく活かす方に持って行かないと、
「自己免疫疾患」は結局、その生命全体の活力を奪います。
(2)は、「チェーン店」的考え方でしょうか?
自分の血縁者や近い者のみに店舗出店を任せる方針では、
他の素早い競合企業に出店され、生存の場所がどんどん奪われてしまいます。
(3)は、先駆者とのM&Aや業務提携になるかなと。
先駆者の強い地場があったとして、そこに殴り込みをかけるのでなく、
お互いの共通のメリットを見据えて交雑する。
かつて「ショップ99」が「ローソンストア100」と業務提携し、
そして吸収合併された事象は、まさにこれだと思います。
当時「ショップ99」は「ローソン」の
ブランドやエリア拡大のための資本をメリットに感じ、
一方「ローソン」は「ショップ99」側の
既存店の立地や運営ノウハウを欲しかったのではないでしょうか?
結局、両者にメリットがあり、その思惑の中で、日本全国に出店が加速しました。
「セイヨウタンポポ」も一方的な侵略者のように見受けられますが、
実は、在来のタンポポも恩恵を受けているのです。
「セイヨウタンポポ」と交雑することで、
自分達の遺伝子を今まで進出できなかった都市部にまで進出させることができました。
というような感じで、
自分達の関心ある領域と絡めて「雑草」という「生命」を観ていくと、
彼らの奥深い「知恵」に気づくことができます。
もっともっと面白い「雑草」がいるはずですので、
皆さんに良質なネタを提供できるよう、
「雑草」研究をこれからも続けていきたいなと想う次第です。