60分2,980円のマッサージ店に思うこと

最近、60分2,980円のマッサージ店が登場しています。
従来の、マッサージ店や整体などの料金の相場は大体60分6,000円。
今回の話題としているマッサージ店は、従来の半額ということになります。
 
この破壊的な価格を見て、
「価格破壊はここまで来たか」という感慨を持つと同時に、
「美容院や理髪店のようにマッサージや整体も生活必需品になってきたなぁ」という
思いを持ちました。
 
なぜ、生活必需品なのかと言うと、
生活必需品である理髪店と、同じような展開になってきたからです。
すなわち、1,000円の理髪店の登場が、今回の60分2,980円のマッサージ店の登場とかぶります。
体の疲れを癒すマッサージは、
今や人々から生活に不可欠なものと認知され、
必要なものなら安いものがよいと、今回お話しているような低価格の店に人が集まるのです。
 
では、従来の店は価格競争に巻き込まれて、
同じような価格ラインにしないと生き残れないのか?というと、
そうでもありません。
美容院や理髪店の業界を見ても、
1,000円の理髪店に人が集まっている一方、
結構な金額をとる美容院も相変わらずの人気で、予約が一杯なところも多いです。
 
1,000円の理髪店に集まる人は、「価格重視」の消費者。
高額の美容院に集まる人は、「品質重視」の消費者と言えます。
 
という訳で、従来の価格帯でやっているマッサージ店や整体は、
より「品質重視」の姿勢を明確にした方がよいだろうなと思う次第です。
「健康、美容、おしゃれ」等の自分への投資や回復については、
価格一辺倒ではなく、品質を重視する人も多いですからね。
 
バブルの頃、世間体やステータス等の、
「外から見た自分」を大事にする価値観を人々は共有していました。
ブランド物の洋服で身を包んだり、ステータスを得るために高級車を買ったり。
 
しかし、バブル崩壊後、
人々の興味は「外から見た自分」から「実態としての自分」に移ってきました。
だからローンを組んでまでハリボテに高いお金を出す意欲もなくなり、
「外」からは見えない「実態としての自分」が喜ぶことに出費をし始めたのです。
 
 自分にとって、本当に必要なものは何か?
 
私は、この風潮を歓迎します。
「外から見た自分」というのは、自分で自分の価値を決められないということです。
だからバブルの頃は、社会や組織に踊らされる消費者という構図が成立しました。
皆、大体同じ価値観を持っていたのです。
 
ところが、バブルがはじけ夢から覚めてみて、
初めて「実態としての自分」に目を向け始めるようになります。
現代社会を表すキーワードは、「価値観の多様化」。
これは、「実態としての自分」に目を凝らせば当たり前に起こることです。
なぜなら、個々人は全く違う存在だから。
むしろ、それまでの価値観が集約させられていた時代の方が不自然だと言えます。
 
そうやって「実態としての自分」の存在に目を向けてみたら、
「実態としての自分」はボロボロで全く満たされていなかった。
そして、「癒しブーム」が到来するのです。
同時に、内面の充実に寄与するような「習い事ブーム」も発生します。
これらのニーズに合致するようなサービスが拡大しているのは、このためです。
 
「外から見た自分」への出費と「実態としての自分」への出費は全く性質が異なります。
「実態としての自分」への出費の対象は、ハリボテでは許されません。
真に「実態としての自分」に寄与するものを求めます。
 
 自分にとって、本当に必要なものは何か?
 
いわゆる「本物志向」というヤツですね。
 
話をマッサージ店や整体に戻します。
その「実態としての自分」に寄与するサービスの代表格として、
マッサージ店や整体があります。
ですから、顧客がマッサージ店や整体に求めるものとして、
「安かろう悪かろう」はあり得ません。
 
いくら価格を下げても、サービス品質や得られる効果を顧客は注視します。
逆に言えば、サービス品質や得られる効果の高さを実感すれば、
価格の違いには目をつぶる可能性も高い訳です。
 
60分2,980円のマッサージ店の登場で、
マッサージ店や整体の業界は成熟してきたように見えます。
単価の安い店では、人材教育や専門知識の習得がなかなかできない面もあり、
どんなに頑張っても「低価格中品質」くらいまでになるのではないでしょうか。
また、通常の料金体系のお店は「中価格高品質」を目指すべきなのでしょうね。
価格に違いがあっても、
「中品質」よりも「高品質」を選ぶ人々が圧倒的に多いはずですから。
 
 顧客は、何を求めてやってくるのか?
 
ここのところを十分に認識し伸ばすことで、たくさんのファンを獲得できるように思います。
ただし注意が必要なのは、顧客が求めているものは人によって違うということ。
隠れた顧客ニーズを調査分析して、いくつかのパターンに分ける必要があるかもしれません。
そして、発見したニーズパターンのうち主流のパターンに合わせた
品質向上やサービス付加を図ることで、低価格店に対する差別化ができる訳です。
 
今まで、多少の差別化はあっても明確な差を顧客に打ち出せずにいたマッサージ店や整体。
低価格マッサージ店の登場がトリガーとなり、
提供サービスも、もっともっと多様化してくるのではないかと予測しています。
中国由来のラーメンが日本でアレンジされ日本の国民食となったように、
中国やヨーロッパ由来のマッサージや整体も、
これから日本独自の工夫が加わり、新たな日本型サービスとして開花する訳です。
是非、日本の美味しいラーメンのように、
美味しいサービスを提供するマッサージ店や整体が登場してくるといいなと思います。