ジーン(Gene)とミーム(Meme)−あり続けるもの−

万物は流転(るてん)します。
ですから、全てのものはいつか消え去り、そして新しいものが生まれる。
それが、この世界の定めです。
 
量子力学によれば、世界を構成する最小単位である素粒子ですら、
何もない真空から生まれたり、反物質とぶつかって消滅することがあります。
ですから、この世界に永遠のものなど存在しない訳です。
 
しかしこの流れに逆らって、「あり続け」ようとするものがあります。
それが、以下の2つのタイプです。
(1)延命するもの
(2)増えるもの
 
順に説明していきます。
(1)延命するもの
  太陽は、水素を熱核融合させてヘリウムを生成し、燃え続けています。
  今、ちょうど半分の水素を使い切ったと言われており、
  中心部の水素を使い切る寿命は63億年後と言われているようです。
  太陽は延命の仕組を有し、それによって同じ状態を維持しようとしています。
  またブラックホールにも、寿命があるようです。
  最後は、素粒子レベルに分解されるか、
  もしくは全てのブラックホールが一つになって時空がつぶれて終焉を迎えるか、
  のどちらかだと言われています。
  もっとスケールの小さい例で言えば、私達の体もこのグループです。
  驚くほど精巧な同じ状態を維持する仕組を有しています。
  例えば、体温。
  私達の体温は、夏でも冬でも36度台を維持しようとするのです。
(2)増えるもの
  これが、ジーン(Gene)とミーム(Meme)です。
  例えばひまわりのような一年生植物は、増え続けることで「あり続け」ます。
  もしひまわりがタネをつけなければ、
  彼らは1年で地球から姿を消してしまうのです。
  だから彼らは必死で、毎年たくさんのタネをつけます。
  増え続けたいという遺伝子(ジーン)の性質のお陰で、
  ひまわりという種族は、この「世界」に存続し続けることができるのです。
  一方で、生命の個体は、そんなに長くこの世界に留まることができません。
  例えば、織田信長は享年49歳です。
  普通の個人なら人々の記憶からもすぐに消えてなくなり、
  その存在は「世界」から完全に消滅してしまいます。
  人類という種は、ジーン(Gene)の力で、この「世界」に「あり続け」ても、
  織田信長という個人は、そんなに長く「あり続け」ることができない訳です。
  しかし、織田信長は今でも私達の頭の中に知識として残っています。
  これは、織田信長の存在が、
  「ジーン(Gene)」から「ミーム(Meme)」に転化したことを示すものです。
  「ミーム(Meme)」とは、何か?
  ウィキペディアでおさらいしましょう。

ミーム(meme)とは、人々の間で心から心へとコピーされる情報のことであり、
社会・文化を形成する様々な情報として分析される。
例えば、習慣や技能、物語といった、人から人へコピーされる様々な情報である。

  すなわち織田信長は、遺伝子の存在から情報の存在に変化して、
  「ミーム(Meme)」として、
  人々の心の中にコピーを繰り返して、増殖するようになったのです。
  もちろん、「ジーン(Gene)」もきちんと仕事しています。
  子孫の織田信成が生まれたのは、「ジーン(Gene)」のお陰ですね。
  それから、織田信成がテレビで人気を博しているのは、
  織田信長の「ミーム(Meme)」が
  400年経った今でも生き続けているからこそという面があります。
  この織田信長の「ミーム(Meme)」は、
  これからも長く生き続けていくことでしょう。
 
という訳で、この「世界」で「あり続け」るものには、
「延命するもの」と「増えるもの」があるというお話をさせて頂きました。
どちらも「世界」を語る上で、かかせない要素です。
 
特に私は、「増えるもの」に興味があります。
「生命」の「本質」の半分である「遺伝子」、「ジーン(Gene)」。
そして、おそらく「生命」の「本質」の残る半分を構成する「情報」、「ミーム(Meme)」。
私達人間で考えますと、
私達の物質的な体、それから遺伝子がもたらす本能は、「ジーン(Gene)」陣営、
私達の脳が情報処理を行う、思考や自我の領域は、「ミーム(Meme)」陣営、
になろうかなと。
 
現在は、ITによる高度情報化社会に突入しています。
情報環境が整備されることにより、
今後「ミーム(Meme)」は、指数関数的に恐ろしいスピードで高度化していくはずです。
ジーン(Gene)」の遅々とした進化のスピードなんて、比べものになりません。
 
そういった環境変化の中で、
私達は、脳の中を常にアップグレードしていくべきです。
様々な「ミーム(Meme)」が多様に活発に動き回るこのIT社会で、
希少価値の高い糧や薬となる「ミーム(Meme)」を容易に発見できるようになってきました。
 
「情報」の濁流を恐れる人々もいるかもしれませんが、
私は積極的にこの濁流に飛び込み、
ミーム(Meme)」の勢いやエネルギーを取り込みたいなと感じているのです。