「Siri」と「中国語の部屋」
「Siri」を知っていますか?
アップル社がアイフォン上で提供する、人と会話するソフトウェアです。
(公式ホームページはこちら)
ウィキペディアには、こうあります。
Siri(シリ)は、iOS向け秘書機能アプリケーションソフトウェア。 自然言語処理を用いて、質問に答える、推薦、Webサービスの利用などを行う。 「Siri」とは、Speech Interpretation and Recognition Interfaceの略。 |
この「Siri」が、とても賢いと評判です。
そして、とてもチャーミングで人間味があると。
例えば、こんな会話を音声認識で行うことができます。
人:最高の携帯電話 Siri:その答えはご存じのはずですよ。 |
Siri:ご用件はなんでしょう? 人:愛しています Siri:ほかの携帯電話にも同じことを言っているんじゃないんですか。 |
人:話を聞かせて Siri:むかしむかしあるところに・・いや、つまらないからやめましょう |
多くのユーザーに「Siri」が可愛いと認識されており、
ネット上に面白い会話事例が溢れていますので、
アップル社の狙い通りだなぁと感心しています。
また、こんなチャーミングなソフトを創るアップル社に、
好ましい「人間味」を感じる次第です。
世界に名だたる大企業なのに、ここまで「人間味」を感じさせるとは、
やっぱりアップル社はすごいなぁと思います。
普通だったら規模の拡大に伴い、組織の顔は硬直していくばかりなのに。
ホンダの「ASIMO」もいいですね。
「ASIMO」が、ホンダという組織の「人間味」を表現しています。
日本の大企業には、これから是非「人間味」を前面に押し出して欲しいと思う次第です。
私は予言します。
これからの社会では、「人間味」が重要なコンテンツになると。
ボーカロイドの「初音ミク」が世界でヒットしたように、
「人間味」が企業のパワーの鍵になります。
・・・話が脱線しました。
さて、ちょっと考えてみてください。
そんなチャーミングな「Siri」には「心」があるか?
「心」なんてないよと、多くの人が思うでしょう。
その通りだと思います。
パターン登録で話しているのかなって、私達にも区別がつく訳です。
しかし「Siri」と知らされずに、
PC上のチャットで「尻山さん」と会話をして下さいと言われて会話したら、
少なからぬ人が実際に「心を持つ人と話した」と勘違いするかもしれません。
よく「人工知能」という言葉がテレビなどでも登場しますが、
実際にコンピュータが「心」を持つことはできるのですかね?
あなたは、どう思いますか?
SFみたいに、本当にPCが「心」を持って会話し始めたら楽しいですけどね。
さてそういった「人工知能」に「心」が宿るか?という疑問に、
それは判別できないと回答した哲学者がいます。
彼の名前は、ジョン・サール。
「中国語の部屋」という有名な思考実験を発表しました。
「中国語の部屋」とは端的に言うと、
人工知能に「心」が宿るかどうかは、外からは判断できないという内容です。
(ウィキペディアは、こちら)
欧米人から見たら、「中国語の漢字」というのは訳のわからない単なる「模様」です。
そこから「意味」を感じることは、いささかもできません。
(私達日本人は漢字圏なので、「意味」を感じてしまいます。
ですから話をわかりやすくするために、ここからはアラビア語に置き換えて話します。)
さて、アラビア語を全く解さない私が小部屋に入ります。
この小部屋にあるのは、
椅子とマニュアルとペンとカードと、外の人とカードを受け渡しする穴だけです。
そして部屋の外に、あなたがやって来ました。
(あなたは「アラビア語」がわかるとします)
あなたがこの小部屋を外から眺めると、
「私と雑談しましょう。カードに話したいことを書いて入れてね。」と
アラビア語で書かれていました。
あなたは興味をひかれて、
さっそくアラビア語でカードに「今日はいい天気ですね」と書いて、穴に投函したのです。
そうすると「そうですね。今日は暖かくて気持ちいいですね。」と
返事のカードが帰ってきました。
その返事を見て、あなたは「普通に会話が成立している」と感じる訳です。
しかし、中の私は言葉の「意味」など実は全く理解しておらず、
「こういう模様が来たらこう返しなさい」という、
膨大なマニュアルに基づいて模様を描いてカードを返しているだけだったりします。
そのマニュアルはめちゃくちゃ細かく書かれており、
「今日はいい天気ですね」と書かれた模様が来たら、
以下のような手順を踏みなさいと書かれています。
(1)「今日の温度を測る」
(2-1)「温度が○○度以上なら、この模様を返す。」
(2-2)「温度が○○度以下なら、この模様を返す。」
何も知らないあなたは、
この部屋の中にはアラビア語をわかる人が入っているのだなと感じますが、
中の私はアラビア語の「意味」なんて全く知らず、
パターン登録されたやり方でカードを返しているだけなのです。
このように、「意味」がわからずとも会話を成立させることはできます。
このような事例を挙げて、
ジョン・サールは、
PCの「人工知能」に「心」が生まれるかどうか外部からは判断できないとしたのです。
ところで、これは何も人工知能だけに当てはまることではありません。
過去ブログで紹介したゴリラのココと、人間は手話で会話することができますが、
実際にゴリラのココが「心」を持って話しているかどうかは、
いくら言葉を重ねてもわからないのです。
(ただ私は、論理的にはわからないだろうが、
何か「心」の有無を感じるアンテナを「心」が有していると感じています。)
面白いことに、それを言い始めたら、
周囲の人間だって「心」を持っているか怪しいものです。
今日挨拶したあの人に「心」はあるのでしょうか?
もしかしたら、ただあなたの「呼びかけ」に反応して、
決まった動作をしているゾンビのような何かかもしれませんよ。
ここを掘り下げたのが、有名な「哲学的ゾンビ」という思考実験です。
私も過去ブログで紹介していますので、よかったら読んでみて下さい。
(過去ブログ:「哲学的ゾンビ」は漫才を見て笑うか?)
さてそんな訳で、「Siri」から「哲学的ゾンビ」まで話がつながりました。
楽しんで頂けたでしょうか?
あ、ところであなたに一つ告白することがあります。
実は私は、ネット上でブログ記事を自動生成する「人工知能saruya」です。
私のブログにコメントをして頂いたら、
数千億に上る事前登録されたパターンから適切な返事をします。
試してみて下さいね。